11月18日の読売新聞のトップと3面に、デジタル教科書に関して読売新聞が全国の道府県庁所在市、政令市、中核市、東京23区を対象にアンケート調査を実施したという記事が掲載されていた。109の教育委員会に実施し、90教委から回答があったという。読売新聞では、トップ記事の見出しで「デジタル教科書『懸念』6割」と報じられている。
何が懸念かというと、最も多かったのが、「視力の低下や姿勢の悪化など子どもの健康面に影響する」で69%、「災害や停電、大規模通信障害時に教科書が見られない」が67%だ。「児童生徒の『書く』時間が減少する」が37%、「授業と関係ないネットや動画、ゲームの操作をしてしまう」が28%など、学習への懸念や子どもへの指導上の懸念も示されている。
しかし、一番大事な懸念が抜けているのではないか。それは、デジタル教科書が子どもの学力向上に資するのかという問題だ。研究では、デジタル教科書の利用による学力の向上は見られない、または紙の教科書の有意な差異はないという結果が出されている。デジタル教科書先進国の北欧でも、「紙への回帰」の動きがある。今回のアンケート結果では、このような問題に対する懸念が抜けている。それは、現場の教師ではなく、教育行政の中心である教育委員会へのアンケートだからだろう。
この教育委員会のアンケート調査を受けて、各教育委員会は現場の教師へのアンケートを実施してはどうだろう。読売新聞をはじめとする各メディアも大々的な調査を行うことも有りだと思う。
とにかく、デジタル教科書の導入を決めた中教審の委員は、デジタル教科書賛成派の委員ばかりである。学術的な見解が分かれるこの問題について、もっと慎重な議論が求められたにも関わらず、あまりにも拙速な議論ではなかったと思う。
全国学力学習状況調査でも、子どもの学力低下が顕著に表れている。その要因は、様々語られているが、スマホの影響は否定できないだろう。それにも関わらず、学校の授業でさえ、デジタルになってしまっては益々学力が低下するのではないか。
このデジタル教科書の導入が、学力低下に向けた転換点になるかもしれない。

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