11月4日、「公私立高校連絡協議会」が、大阪府内の高校に入学した府内の公立中学校卒業生のうち、私立への進学者が初めて4割を超えたことを明らかにした。2010年度まで公立7割、私立3割と公立と私立での比率が決められていたが、橋下知事(当時)が、「こんなものは、カルテルだ!」と言って、撤廃した。それ以降、私立の割合は増加傾向にあったが、とうとう、私立高校の割合が4割を超えてしまった。その反面、公立高校の約半分が定員割れという事態になっている。
この原因は、明らかに授業料無償化の影響である。現在三党間で高校無償化についての制度設計がなされ、次年度から全国で私立高校も含め高校の無償化が実施される。この大阪府の現象が全国で発生することになる。高校教育の役割を少なくない私立高校が担うことになる。本当にこれで良いのだろうか。
政府では、高校教育改革について議論を始めている。授業料無償化の制度設計と公立高校の改革について議論が行われようとしているが、果たしてそれだけで良いのか。重要なことは、税金を投入するだけの価値がある私立高校がどれだけあるのかという問題だ。この間、スポーツ強豪校を中心にいじめ、体罰などの問題が多数発生している。このような問題の原因を、単に個人に帰着させるのではなく、私立高校の教育の在り方、経営の在り方まで問わなければならない。例えば、これらのスポーツ強豪校は、大量の部員を抱えている。しかし、公式戦に出場できるのは、部員の中でほんの一部だ。このような構図がいじめ事案を発生させる要因になっている。
私立高校の教育の質の問題について、早急に議論をする必要があるのではないか。そうでなければ、不人気な(ということは、教育の質に問題がある)高校の延命に政府が手を貸すことになる。このような趣旨の議論を行うという動きが全くと言って見受けられないのが残念だ。
一方、府立高校定員割れの「張本人」である吉村知事は、「高校生に投資する」という宣言をしたが、校舎の建て替えではなく、教室の整備だ。前のブログにも書いたように、今までがボロ過ぎた教室や校舎に手を入れてくれれば、生徒は喜ぶ。だが、それで高校生に投資したと思われたら、残念でたまらない。それに、府立高校の魅力化も国際交流では、魅力に欠ける。吉村知事も私立高校に肩入れしているなら、もっと私立高校で実践されている尖った教育を研究すべきだろう。
さらに、もう一つ問題提起しておきたい。入試制度の問題だ。多くの都道府県では、私立高校の入学試験が公立高校よりも先行実施される。そのため、授業料が無料で、施設設備も整っており、かつ合格すれば一安心できる私立高校に人が集まるのだ。これでは、公立高校が不利な状況に置かれているのは明白である。私は、公立高校と私立高校が互いに切磋琢磨することには賛成だ。しかし、切磋琢磨をするなら、生徒獲得競争において「同じ土俵」、すなわち同時入試日で競争するのが公平だと思っている。その上で、公立私立を問わず、住民に選ばれない高校は、高校教育から退場してもらったらよいのだ。このことは、再三再四述べているが、高校関係者、特に自治体の教育委員会関係者や学者の中でも一向に議論にならない。これでは、公立高校の衰退が、目に見えている。

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