西日本新聞の政令指定都市に対するいじめ重大事態に関する調査で、横浜市などで対策強化により認定件数が増えていることが分かった。一方、政令指定都市の中には認定を巡り、調査負担や被害者から訴訟を起こされるリスクを懸念し、法律に沿った対応をするのは難しいという声もあるという。
いじめ防止法では、心身に重大な被害が生じた疑いがあったり、不登校が計30日以上に及んだりした場合、速やかに重大事態とし、第三者委を設置するなどして調査するよう求めている。軽微ないじめと違い、いじめが要因で不登校が計30日以上になるというのは、いじめが起因しているということに疑いようがない。ところが、昨年4月に福岡県田川市の生徒が自殺した問題では、生徒が担任に相談し、欠席が計69日に達していたにもかかわらず、学校が重大事態に認定していなかったというのだ。有り得ないことだろう。
ところが、このようなずさんな対応を裏付けるような証言も記事に掲載されていた。政令指定都市の幹部や担当者は次のように語っている。
「法律通りに厳密に認定すれば、重大事態の件数は倍増どころではなくなる」
「不登校が30日以上に上っていても、行為が軽微だったり、いじめが主要因ではなかったりすることは多い」
「学校や市を相手取った訴訟で、第三者委の調査報告書が証拠として利用されることもあり、重大事態とすることに消極的な気持ちはある」
「いじめの調査費用や第三者委の委員の選定などは国に支援してほしい」
とんでもない姿勢だ。教育行政の責任者がこのような姿勢ならば、たとえ学校現場が「いじめが原因で長期欠席になりそうな生徒がいる」と重大事案であることを教育委員会に報告しても、「本当にいじめが原因ですか?」と再調査、再報告を求められる可能性が高くなる。これでは、学校現場は教育委員会に報告することを躊躇してしまうだろう。結果として、いじめの被害者救済の対応が遅れ、より事態は深刻化する。被害者はもちろん、被害者の保護者の学校、教育委員会への信頼も地に落ちることは目に見えている。
記事の中で弁護士が次のようにコメントしているのは当然だろう。
「被害を深刻化させないために、現行の重大事態の要件は変えるべきではない」
どこの政令指定都市か知らないが、上記のような無責任な態度でいじめ問題に向き合っているのなら、政令指定都市の権限をはく奪して、道府県の管理下になる方が良い。いじめは、児童・生徒の生命に関わる問題なのだ。
いじめ調査負担、訴訟リスク…「重大事態認定に消極的な気持ちある」 自治体担当者明かすhttps://news.yahoo.co.jp/articles/f84225ff33e85320a26afff3653a51b5cea46da1
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