文科省の苦情仕分け問題

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 文科省は、9月26日に「公立学校の教育職員の業務量の適切な管理その他教育職員の服務を監督する教育委員会が教育職員の健康及び福祉の確保を図るために講ずべき措置に関する指針」を通知した。その中で、注目すべき点が、「学校以外が担うべき業務」として、保護者に対する苦情対応が盛り込まれた点だ。

 通知の別添ファイルには次のように書かれている。

「保護者等からの過剰な苦情や不当な要求等の学校では対応が困難な事案への対応
服務監督教育委員会が直接苦情等に対応する相談窓口の設置や、学校が弁護士等の専門家を活用できる環境の整備等により、教育委員会等の行政機関の責任において当該苦情及び要求等に対応できる体制を構築すること。」 

 まずは、このような指針を示したことは歓迎したい。しかし、である。実際にこのような対応を行うためには、様々な壁があるように思う。文科省も自治体に丸投げをするのではなく、指針の実現に向けて積極的に関与すべきだ。

 第一の壁は、「教育委員会等の行政機関の責任において当該苦情及び要求等に対応できる体制を構築すること」とされている点である。教育委員会が、学校が対応しきれない場合の苦情対応の体制を構築するのだが、教育委員会としては、新たな予算措置を求めるため、在籍的基盤がぜい弱な自治体では、十分な体制が構築できないのではないか。これに対しては、国が積極的に予算措置を行わなければならないだろう。

 第二の壁は、「保護者等からの過剰な苦情や不当な要求等」という判断をだれがするかという問題だ。おそらく、校長が行うと考えられるが、この判断基準が難しい。どの程度ならば、学校の対応が困難な事案となるのか、それぞれの学校により状況も異なると思われるが、少なくとも文科省はガイドラインを示さなければならないだろう。

 第三の壁は、保護者理解である。前述したガイドラインと同様、保護者に対する啓発も必要だ。何が正当な要求で、何が不当な要求なのか。例えば、クラス編成の前によくある「〇〇さんとは同じクラスにしてほしくない」などの要求は、正当な要求なのか、不当な要求なのか。おそらく要求の理由によると判断されるが、保護者の要求が満たされた場合でも、他の保護者には理解できない。ある保護者は要求が満たされ、ある保護者は却下されるというようなことがあれば、学校への不信は益々増すだろう。

 こんな面白い(と言えば失礼だが)ことがあった。3クラスしかない学年なのに、4人の生徒と同じクラスにしてくれるなと要求する親がいた。これは不当な要求になるのかどうか。中々面白い事例である。

 とにかく、文科省は自治体に丸投げをするのではなく、予算措置や制度設計を行い、積極的に関与すべきだ。そうでないとまさに「絵に描いた餅」になってしまうだろう。


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