9月19日の読売新聞のThe論点に「水泳授業 続ける?」が掲載されていた。A論が「学校外民間に委託」、B論が「財政負担重く廃止」という事になっている。どちらにしろ、「学校で水泳授業をしないのだ・・・」と思った。
水泳授業は、学習指導要領で小1~中2まで必須となっている。近年、小中高生の水難事故も増えており、水泳授業が無くなることは、私は全く想定していなかった。
論点は様々あるが、記事を整理すると、次のようになる。
論点1 水泳授業は教員負担が大きい。
学校での水泳授業は水質管理など教職員の負担が大きい。高校では、基本体育の教員が水質管理を担当していたが、プールを授業よりも早く、そして授業よりも遅くまで使う水泳部があるところは、水泳部員が管理を肩代わりしたり、顧問が管理したりしていた。しかし、学校規模が小さい小中学校ではそうもいかないだろう。教員の負担が大きいのは頷ける。
論点2 学校のプールの維持管理には、財政的負担が大きい。
現在使用している学校のプールは、老朽化が著しい。ろ過機の故障、水漏れなどの修理には、軽微なもので70万~80万、大掛かりなもので1千万を超える費用が掛かると記事にも記載されている。私が30代で勤めていた学校も、コンクリートで作られたプールなので、劣化が著しく、プール授業が始まるとプールで足を怪我したと保健室を訪れる生徒が急増すると聞いた。私も水泳部の顧問をしていてプールで泳いだこともあったが、ターンをして、プールの壁を蹴ると、ザラっという感覚があり、下手をすると怪我をするなと思っていた。
論点3 地域資源はどこにもあるわけではない。
学校での水泳授業が教員の負担になっているから、地域のスイミングスクールに民間委託するケースが増えている。これは、教員の負担も軽減されるし、水泳のプロに教えてもらえる効果は大きい。ところが、地方に行くとそのような地域資源が無いケースもある。だから、全国的に「民間委託しましょう」という話にはならないのだ。
以上のような論点があるが、「だったら、水泳授業を廃止しますか?」という事はありえないのではないかと思っている。日本の周りは海に囲まれているし、河川もある。水との関わりは切っても切れないのが、日本での生活なのだ。ところが、水に慣れ親しむことが少ない子どもたちが、川や海で遊ぶと何が危険で何が危険でないかがわかっていないために、水難事故が起きることが多い。だから、少なくとも水というものを理解するための水泳授業は必要だと私は考えている。
廃止論の千葉工業大学の福嶋尚子教授(教育行政学)は、
「民間委託や公共施設の利用は、どの自治体でも選べる手段ではない。プールの授業にどこまで時間と労力をつぎ込むか、税金の使い道や教育活動全体のバランスを踏まえた議論が必要だ」
とコメントしているが、このコメントは如何なものかと思う。日本はOECDの中でも教育予算が少ない国の一つだ。教育にもっと資金をつぎ込むことが重要ではないかと思う。専門家がこのようなことを言ってしまっては、元も子もない。
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