文部科学省は5日、学習指導要領の全面改定に向け議論している中央教育審議会(文科相の諮問機関)の特別部会で、これまでに出た意見をまとめた「論点整理」の素案を提示した。章立ての項目は、以下の通りになっている。
第一章 次期学習指導要領に向けた基本的な考え方
第二章 質の高い、深い学びを実現し、分かりやすく使いやすい学習指導要領の在り方
第三章 多様な子供たちを包摂する柔軟な教育課程の在り方
第四章 情報活用能力の抜本的向上と質の高い探究的な学びの実現
第五章 「余白」の創出を通じた教育の質の向上の在り方
第六章 豊かな学びに繋がる学習評価の在り方
第七章 その他諮問で提起された事項の在り方
第八章 今後の検討スケジュールや検討の在り方等
どうも、前回の学習指導要領の取り残し分を今回の改定で整理解決しているように思えてならない。何か「在庫一掃セール」のように見えてくる。その上、様々な課題を解決するために、カリキュラムの柔軟化をよりすすめ、不登校生徒・外国人生徒への対応を推し進めていくというような、個別課題とまでは言わないが、目の前の課題の解決に焦点化した改定だなと思ってしまう。どうも、改定に向けた骨太の柱となるようなものが見えてこないのは、私だけだろうか。
探究学習の推進のためにも「デジタル化の推進」が盛り込まれているが、デジタル化の推進は、手段でしかない。本質的には、探究学習の目的である。

と素案のイメージに記載されているが、これでは探究学習が何をめざすのかがわからない。
私は、兵庫県で仕事をしているとき、附属中学校の近くにあるSSHの発表会を拝聴したことがある。大学との連携があることも含め、その内容は高校の理科系の学習を遥かに超えたものだった。ところが、発表を終わった後に感じたことは、「その研究、どういう意味があるの?」という素朴な疑問だ。確かに、一人一人の高校生は、「好き」を育み、「得意」を伸ばしている。だが、その研究の社会的意味が十分に捉えられているのだろうかと思うのだ。だから、「当事者意識を持って、自分の意見を形成し、対話と合意ができる」ということが大事なのだろうが、これでは弱い気がする。すでに、OECDのEducation2030では、「Well-BeingをめざすAgency」が打ち出されているのだから。
そのように考えると、今回の指導要領の改定では、「Well-Being」も「Agency」も一言も出てこない。この概念こそが、VUCAの時代に最も大切なコンセプトと思うのだが・・・。
次期学習指導要領でもまた世界との乖離が起こり、日本は世界の教育の流れから遅れるように思う。そして、その遅れは、日本という国の衰退に繋がっていくように思うのだ。
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