小芝風花の大化けー「波よ、聞いてくれ」


 今日は、本当に本当の雑談である。深夜帯の放送で始まった小芝風花主演の「波よ、聞いてくれ」が、放送開始から評判だったので、第3回から録画して観ていた。昨日の晩、やっと最終回までたどり着いた。このドラマ、何が話題かというと、鼓田ミナレというヒロインを小芝風花が演じているのだ。このミナレ、とんでもないキャラの女。金髪、厚化粧の上に、話す内容は頭を通過していない。思ったことを速攻、マシンガンのように話し続ける。この才能を見出したラジオ局のディレクターにパーソナリティーとして抜擢されて、ハチャメチャのラジオ放送をするというドラマである。
 ドラマの内容も破天荒だが、このドラマで小芝風花が大化けした。今までの彼女のイメージは、かわいいお茶目のキャラだったが、このミナレは言いたい放題のトラブルキャラかつ、マシンガントークである。今までの彼女のイメージとは、まるで違う役を演じている。超長セリフもかなりあり、実際台本を見た彼女は、「自分にできるかどうか・・・」と不安になったらしい。最終回、突如発生した地震により、夜通しのラジオ放送を行うことになったミナレは、いつもの彼女のキャラで寄せられる様々な地震情報や、リスナーの現況を紹介しながら、被害に遭った人々の心の支えになっていく。最後に寄せられたメールは、「おっぱいポリス」という何とも言えないハンドルネームの持ち主からのメールだが、一晩中放送を続けてくれたミナレに感謝の言葉が綴られていた。ハンドルネームからは程遠い感謝の内容に、ミナレは毒づきながらも自分のパーソナリティとしての役わりを自覚し、目に涙を溜める。思わずこっちも涙しそうになった。どうも、ミナレの世界に入り込んでしまったようだ。
 小芝風花は、このドラマで役者としての幅を大いに広げた。今までの枠をぶち破った。彼女もミナレに感謝しているだろう。役者には二つのタイプがあると思っている。一つは、どの役でもその役者のキャラが前面に立つタイプ。もう一つは、どんな役柄も演じられるタイプである。私は、後者を本当の「プロの役者」と考えている。だが、前者の役者でも、その代表と言える高倉健さんレベルになれば、もう超一流と言っていいだろう。彼がセリフを発しなくても、目の動き一つ、顔の一つの筋肉の動きで、演じられるのだから。素晴らしい役者である。私たち世代で早くして亡くなって、「惜しい」と思わせたのが、夏目雅子さんと松田優作さんである。夏目さんの「鬼龍院花子の生涯」では、今までは全然違う夏目さんを見せてくれた。これから大化けして、大女優になるだろうという時期だったのでとても惜しい。松田優作さんは、「太陽にほえろ」のGパン刑事でデビューしたが、この当時は彼のキャラそのもので演じていた。しかし、その後俳優としての成長が著しく、遺作となった「ブラックレイン」は圧巻である。ハリウッドが「世界に通じる悪役」と評した。かれも実際ハリウッド進出を考えていたが、病魔がそれを阻んだ。まことに惜しい。
 最後に、同じ時期に放映されていた木村拓哉主演の「教場0」について、感想を述べたい。ネット上では視聴率が伸びないことで酷評されていたが、今回のキムタクが演じた風間公親は良かった。今までのキムタクではなく、「役者:木村拓哉」を見た思いである。役者としてかなり成長したと思わせる。今までは、トレンディドラマが主で、とにかくどのドラマも「キムタク」だったが、今回は「木村拓哉が演じる風間公親」を見せてもらったと思う。今後の木村拓哉に期待したい。木村拓哉が高倉健並みの大役者になるために、ひとつだけ注文を付けたいところがある。今回の「教場0」で風間が歩くシルエットが映し出される場面が何回かあった。このシルエット、明らかに「風間公親」ではなく「キムタク」だった。その役になりきるとは、歩き方まで変えることだと思う。風間ならどんな歩き方をするのか、そこまで追求してほしかったなと思う。できれば、彼にも世阿弥の「風姿花伝」を読んでほしい。


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