読売新聞「変わる部活動」について

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 6月20日の読売新聞で「変わる部活動」の下が掲載され、このシリーズも完結したようだ。「下」の内容は、部活動の地域移行に向けて指導員をどのように確保するのかという問題であった。記事に掲載されているように、中学校では約23万人の教員が無償で部活動を支えてきた。元々部活動は、学習指導要領に記載されていない自主的な課外活動であるにも関わらずである。
 大阪成蹊大スポーツイノベーション研究所が公立中の保護者に部活動に関する月謝の金額を調査したところ、「2500円から3000円」という額がはじき出された。しかし、本当に民間会社に委託すれば、この金額で済むはずがない。比較的安いと言われているスイミングスクールでも月謝は7000円から10000円というのが相場である。保護者が想定している金額とは相当な開きがある。具体的に考えてみよう。スポーツ庁の指針によると、部活動は平日は大体4時ごろから遅くて6時頃までで平日1日は休み。休日は3時間を目途に土日どちらかの実施である。そうすると活動時間は、週当たり2時間×4日+3時間=11時間となる。1か月で考えると、11時間×4週=44時間。保護者が想定する金額で3000円とすると、月収が132000円。同研究所では、15人程度の部活動指導員が必要になると試算されている。都市部では、まだ可能かもしれないが、少子化が進む地方では、かなり難しいのが現状である。
 だから、私は兵庫教育大学附属中学校に勤めていた時に、大学生を部活動指導員として派遣してくれと提案した。大学のある加東市は、お世辞にも都会とは言えない。このような地域で、部活動指導員を確保するために大学生を部活動指導員として養成し、まずは付属中学校でモデル事情を展開し、うまくいけば、地域の自治体に派遣することを提案した。これは一石四鳥である。第一に、中学校の教員にとって、働き方改革が推進させる。第二に、生徒にとっては専門の経験を積んだ学生に指導してもらえる(かつ、中学校の教員にとっては専門外の部を指導することから免除される)。第三に、学生にとっては、在学中から中学生に対する指導機会が得られる。第四に、大学にとっては地域貢献のステータスが得られるというものである。しかし、この提案は、なかなか進まなかった。担当の大学教員は、「部活動指導員は、正式な制度ですか?」と言い出す始末。信じられない事態が続いた。その結果、私は付属中学校を去ることになった。正直愛想が尽きたというのが気持である。教育という名がつく大学でこの程度か思った。しかしながら、この新聞記事を読むと、同じようなことを考えている大学が紹介されている。大阪体育大学である。さすが私立大学であると思う。地域貢献することにより、大学のステータスを挙げ、学生確保につなげようという戦略なのだろう。
 記事の最後には、保護者が想定される月謝と民間が想定する月謝の差から、経済的困窮家庭の生徒は部活動に参加できない懸念があると指摘している。「このままでは、誰もが参加できるという部活動の特色が失われてしまう恐れがある」と締めくくられている。「?」と思う。「誰もが参加できる」という制度は維持しなければならないのか?例えば、スイミングスクール一つをとっても、経済的格差で通える生徒、通えない生徒が出ている。世の中は、この状況を許容しているのではないか。地域移行というのは、経済的格差で部活動への参加状態に差が出ることを前提にしているのではないかと思う。解決策は、どうすべきか?社会教育を充実し、その範疇の中で地域移行を吸収することが求められるのではないか。この分野に民間を参入させることでビジネスチャンスと考えると、保護者がその負担をかぶる。社会教育という公教育の範疇で行うべきだろう。

 いつか、欧米の部活動と日本の部活動の違いについて、スポーツというものに対するとらえ方の違いについて述べてみたい。


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