7月19日のネットニュースに北九州市のいじめ重大事態の事案が報道されていた。報道のメインは、「北九州市教委、いじめ第三者委設置が1年4カ月遅れ 『対応不適切』」(7月18日yahooニュース)というように、対応の遅れを指弾する内容で、教育長が陳謝している。どんな事案かと思い、報告書を読んでみた(最後にリンク先を掲示)
いじめ事案は、男子生徒が2020~21年、同級生4人からあだ名で呼ばれたり首をひっかかれたりするいじめを受けたと訴え、21年5月から不登校となった。保護者は21年10月に校長にいじめの被害を申告したというものである。
報告書には、この対応の遅れについて、当該校の問題、北九州市教育委員会の問題が指摘されている。
学校の問題としては、部活動顧問の問題、担任の問題が大きいようだ。上記の生徒と同級生は、同じバスケットボール部に所属し、当該生徒と4人の同級生の内の生徒Aとは、関係が良くないと顧問も把握していたようだ。そんな中でボールが頭に当たったり、手が目に入ったりすることがあり、当該生徒がそれを生徒Aによるいじめと感じたのである。
ご存じのように、現在のいじめ防止対策推進法では、加害者と思われる生徒が、故意であろうがなかろうが、被害を受けた生徒が「いじめ」と認識すればいじめと認定される。報告書でも、これらの事象をいじめと認定している。
そして、不登校になった原因は、次のように記載されている。
「令和3年5月26日頃に当該生徒が部活顧問に対し眼科に行くために部活を休むと伝えた際に、部活顧問は、当該生徒に対し、眼の視力低下の原因はカードゲームのやり過ぎではないかという趣旨の発言をしていた。
当該生徒は、令和3年3月の事故により左眼の視力が低下していたにもかかわらず、部活顧問からカードゲームのやり過ぎが原因と言われたことに精神的苦痛を受け、これが不登校の引き金になったと述べていることから、部活顧問の上記の発言は、当該生徒の心情への配慮に欠けた不適切な発言であった」
当該生徒と生徒Aとの関係性が悪いと認識していたならば、もっと別の対応があったはずだ。日頃から生徒をよく観察していれば、生徒間の人間関係は見えてくる。この部活顧問は、いじめの疑いを考えず、単なる事故と判断して、当該生徒に寄り添うことをしなかった。
次に担任の問題だ。担任は令和3年4月の家庭訪問時に、同年3月の事故について部活顧問に相談しても解決しないなどの話を聞いていたし、その後も度々、部活動上のトラブルの問題について訴えを受けていたが、担任は保護者からの申告内容を管理職に報告せず、保護者と学校との面談の機会を設けることをしなかった。
部活顧問にしても、担任にしても、いじめという問題に関して「アンテナ」が低すぎる。この初期の段階で対応していれば、これほどこのいじめ事案の対応が遅れることはなかっただろう。
最後に市教委の対応である。令和3年10月22日に被害生徒側の前代理人弁護士から学校及び市教育委員会が通知書を受け取っている。ところが、市教委はこの事案を重大事案として市長への報告する機会が複数回あったにも関わらず、報告しなかった。その理由を報告書は次のように記載している。
「市教育委員会は、推進法やガイドライン等に規定のない、内部規定により重大事態として市長への報告前に市教育委員会による調査を行う必要がある、重大事態として市長への報告前に当該生徒側は調査目的、調査主体、調査計画などの要望を記載した書面を提出する必要がある等として、速やかに重大事態として認定した上で市長への報告を行わなかったことは、推進法の趣旨に反する極めて不適切な対応であった。」
生徒のいじめの問題よりも組織内の内部規定を重視するという、「あんたらは、単なる官僚か!」と言いたくなるような対応だ。
ところで、この報告書が提出されたのは、令和7年1月23日である。そして、教育長の謝罪があったのは、7月18日。半年後である。北九州市教育委員会!本当に反省していますか?
報告書リンク先
https://www.city.kitakyushu.lg.jp/files/001154133.pdf
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