松本市の重大事態案件


 7月9日に長野県松本市で重大事態案件2件が報告された。いずれも、いじめ案件である。1件は、生徒間のいじめによる長期欠席、もう1件は、自死企図案件である。前者も後者も報告書を読んだが、後者の事案について興味をそそられた。というのも、この案件、いじめ重大事態案件という枠組みで報告されているが、実は教頭及び担任の不適切な対応による事案である。報告書によると、保護者及び本人のたっての希望でいじめ重大事態という取り扱いになったという。

 詳しい事実経過などは、下記に示されているリンクにアクセスしてもらえばよいのだが、簡単に言うと、次のようになる。
(1)小学校から中学校への引継ぎの支援会議に教頭が出席しているにも関わらず、校内で共有を怠ったことにより、本人及び保護者の不信を招いたこと。この共有不足により、様々な齟齬を招いている。
(2)入学後の担任ついても、高圧的で差別的な言動傾向のある教員が担任になり、本人に対して適切な指導を行わなかったこと。
(3)このことにより、本人が不登校に陥り、自死を企図するまでに追い込まれていたこと
である。

 報告書を読んでいると、担任の言動には次のようなものがあった。
担任と本人が初めて会った時の話である。

本人と担任との会話の中で、本人が頷く際に、「うん」という言葉を発 したとき、担任からは、「返事は『うん』じゃなくて、『はい』だろ」と強い語気での発言があった。このとき、本人は、今後の中学校生活は大丈夫なのだろうかと不安な気持ちが膨らんだ。

とある。不安になるのも当然だ。

昼食時の話である。

本人が、「もうちょっと減らしていただけませんか」と尋ねた際には、「それぐらいは食べろ」と言われて返されたこともあった。他の生徒の中にも、お腹が痛くなってトイレにいく人や、食べきれず残す人がいたが、担任は、「なんで知らせないんだ、そしたらもっと減らしてやるのに」と怒鳴ることがあった。

保護者の聞き取りには、

頑張って登校したある日の朝、本人は担任から、「なんだお前、来たのか。で、今日はどうするんだ、帰るのか。明日はどうするんだ、休むのか。帰るのか」という趣旨の言葉を受けた。家に帰った本人の姿は、保護者の目には、「心が折れた」ように見えた。ここから、本人は学校に行けなくなった。

とある。この教師の言動は、不適切としか言いようがない。

報告書を読み進めていくと、担任への聞き取りのところで、次のような記載があった。

卒業式が終わり、来年度の方向を確認する際に、新1学年の学級担任について、どのクラスを誰が受け持つのかを話し合った。このとき、女性の担任がよいという本人についての情報を得たため、3学級中2名が男性の担任であり、女性同士の方が相談しやすいこともあると考え、自身が本人の担任に名乗り出た。

この担任の先生は、女性だったのだと驚いた。てっきり男性教諭、それも生徒指導バリバリの先生だと思って読んでいた。この先生も最初からこのようなキャラではなかったと思うのだ。長年の教師経験の中で、形成されていったキャラクターだと思うのだが、それにしても教師としての幅を広げる努力をすべきだっただろう。今の学校には、不登校の生徒はもちろん、発達障がいや学習障がいなどの様々な特性を有する生徒が在籍している。このような生徒を受け入れていく包括的な資質が教員に求められているのだが、この松本市の学校は、「中学校はかくあるべし」という固定観念があったようである。
 報告書にも以下のような記述があった。

今回の重大事態における関係者からの聞き取りからは、中学校ではいまだに“こうあるべき”という雰囲気が残っていて、今の時代にそぐわないように感じたとの言葉があった。このことは、当該中学校だけでなく、市内の多くの中学校にも「中学校文化」として残っている可能性がある。このことが小学校できめ細やかに温かく支援され、学校生活を順調に送っていた子どもが、中学校に入学した途端、上から押さえられる感覚や、小中学校間のギャップとなっている可能性がある。

 もしかしたら、今回の重大事態案件は、起こるべくして起こった事件かもしれない。中学校の体質改善が求められる。

リンク先
https://www.city.matsumoto.nagano.jp/uploaded/attachment/114251.pdf


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