18年前のいじめ事件-神戸市教育委員会


 6月12日のマスコミで18年前のいじめ事案についての報道が相次いだ。当時小学生であった男児に同級生がいじめ行為を行い、約50万円にもなる金銭を脅し取られたという。教育委員会は、「いじめと認定するまで18年の歳月がたち、不適切な対応があったことをおわび申し上げる」と謝罪したが、「説明を求めている」と被害男性は謝罪を受け入れなかった。というのも、隠ぺいがあったことについての説明が不十分だからだ。神戸市教育委員会の説明は、「隠ぺいと取られても仕方ないが、隠ぺいする意図はなかった」という、なんとも言えない歯切れの悪い回答である。
 このいじめ事案、精神的な嫌がらせだけでなく、金銭を脅し取られるという犯罪行為にまで至っている。当時の担任は、「正常ではないと思っていた」と言っているが、いじめ案件ではなく、もう恐喝と言っていい犯罪としてとらえなければならない事案である。教師の感覚、学校現場の感覚はどうなっているのか。さらに、いじめと認定するまでに18年間もかかっている。異常としか言いようがない。
 管理職を務めていた時に、私もいじめ事案にいくつも遭遇した。いじめ事案で重要なことは、事実認定である。時々、被害を訴える被害生徒の事実が認定できない場合もある。いわゆる誤解という範疇のものである。この場合、被害生徒と保護者に「いじめの事実が認められなかった」と報告しなければならない。被害者側からすれば、受け入れがたい内容であるため、加害者側と言われている生徒だけの情報では、結論を出さない。必ず、第三者の証言を捜し求める。いくら調査をしても、被害者が訴えるいじめ事案が事実として認められない場合、管理職として腹を括って調査を報告しなければならない。かなり神経を使う場面となる。
 いじめ事案が事実として認められた時、先生方には「必ず被害生徒側に立って話を進めてほしい」と指示した。多くの場合、加害生徒はいろいろと理由を述べる。それももっとらしく。その時に、いつも加害生徒に問うたのは、「君は、〇〇君(さん)を対等平等の関係としてみていたのか?」である。こう言われると、大概の加害生徒は「平等に見ていた」とは、言うことができない。たまに「平等に見ていた」という生徒がいるが、すかさず私は「それなら、■■君(さん)(この生徒は、同じ加害生徒)に同じことをするのか?」と切り返す。そこまで言われて、初めて自分の接し方が、友人・クラスメイト・同じ部活部員などの対等平等の関係でないことに気づく。いじめ事案は、対等平等人間関係の中では絶対に起こりえない。相手を見下し、下に見ているから起こるのである。
 今回の事案、明らかに神戸市教育委員会に誠実さが足りない。率直に自らの誤りを認め、隠ぺい工作の有無について徹底的に調査すべきである。自らの組織の不都合なことを隠ぺいすることこそが、組織にとって不都合であり、かつ取り返しのつかないことなのだから。私も前職で「組織の不都合を隠ぺいする」場面に遭遇した。何とも言えない苦々しさを感じた。どうも、大阪府で学んだことと兵庫県で体験することは違うようだ。


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