5月1日午後、大阪市西成区の市立千本小学校前の路上で、下校中の児童が後ろから来た車に次々とはねられ、同校の2年生と3年生の児童7人が重軽傷を負った。運転していた男は殺人未遂の疑いで逮捕された。この事件に対して、有識者が意見を述べている。
宮田美恵子理事長(日本こどもの安全教育総合研究所)は、「子どもたちは決まった時間に決められた通学路を使って登下校する。そこを狙う犯罪や事故が起こる以上、任意や善意のボランティアに子どもたちの安全を任せる現状は不十分だろう。早急に通学路の安全についてもう一歩踏み込んで手を打つ必要があると改めて感じる。」(教育新聞2025/5/2)
「もう一歩踏み込んだ手」とは何を意味するのだろうか?教員、地域の大人たちが登下校を見守るのだろうか?それとも行政が警備員を雇って登下校を見守るのだろうか?そもそも、この事案は事故ではない。殺人未遂事件だ。相手に子どもを殺そうという意図があるのだ。登下校の子ども達を狙った卑劣な犯罪なのだ。犯人は自暴自棄になっており、犯罪を犯して刑務所に入るか、自らも死刑になることを望んでいたのかもしれない。こういう輩の起こす事件はどこまで未然に防ぐことができるのだろうか?
できることは、犯罪抑止だろう。登下校を見守る大人の姿を見せることだと思う。そう考えると、警備会社に依頼して、各所に立ってもらい、何かあればすぐさま駆け付けられるという体制を取ることだろうと思うが、一体いくら経費がかかるのだろうか。膨大な費用である。私が勤めていた附属学校の小学校にも登下校時に警備員が校門付近に立ってくれていた。しかし、校門付近なのである。この体制で今回のような事件を防ぐことができたかどうかは、甚だ疑わしい。専門家が「もう一歩踏み込んで手を打つ」というなら、具体的な手立てを示すべきだろう。
もう一人、桜井淳平准教授(流通経済大学共創社会学部)は、
「同様の事件を防ぐ上で何より重要なのは、犯行の背景に何があったのかを理解しようとすることだ。一人の異常行動ではなく、現代社会において多くの人が抱えている境遇として捉えようとする姿勢が、次なる事件を食い止めることにつながると思う。
安全対策は小さな指導の積み重ねなので、無理に何か新しいことをするというより、本来やるべきことに漏れがないかを確認する機会としたい。5月と6月は統計的にも子どもの事故が多い時期だ。狭い道路を歩く際の注意点、学校の周りの危ない箇所など、重要なことを再度強調していいタイミングだと思う。」(同上)
桜井教授の意見の方が理解できる。安全対策の「穴」を見つけて、本来やれることができているかという視点を持つということだろう。この方が現実的である。それにしても、附属池田小の事件から学校の安全神話が崩れ、学校内の安全確保についてはずいぶんと進んできたはずだが、このような登下校を狙った犯罪が起こってしまうと、子どもたちの安全確保をどのようにすれば良いのか、具体的な解決策が浮かばない。
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