3月21日の読売新聞、[再考 デジタル教育 検証 中間報告]<下>が掲載された。如何に中教審のワーキンググループが、十分な検討もせずに、拙速にデジタル教材を「デジタル教科書」に格上げしたかが記されていた。今回でこのシリーズも最終だと思うが、やっと重要な論点が示された。すなわち、デジタル教科書を使用した場合の学習効果なのだ。記事は、次のように記されている。
東京大の酒井邦嘉教授(言語脳科学)らが行った研究では、学習の定着には、デジタルよりも、位置関係や質感など豊富な手がかりがある紙を使った方が有効だとする結果が得られた。紙に比べてデジタルの世界には多くの情報があふれているため、広く浅い理解にとどまったり、考える意欲を失ったりする傾向もみられるという。酒井教授は「紙の教科書こそが脳の健全な成長の糧となる。十分な検討を経ずにデジタル教科書使用の道を広げれば、教育現場が崩壊しかねない」と警鐘を鳴らしている。
この研究や知見に対して、中教審の委員は、きちんと反論しなければならない。ところが、反論どころからスルーしてしまっているのである。これでは、だめだろう。
文科省が推奨する「主体的・対話的で深い学び」において、「深い学び」を如何に実践するかが課題である。「活動あって学び無し」と揶揄されることがある、この「主体的・対話的で深い学び」の学習方法において、「深い学び」に言及したのが、京都大学の松下佳代教授が提唱する「対話型論証」である。このモデルは、何かを主張するとき、そして反論するときも、その理由(もっと言えばエビデンス)を求めるものである。こういうモデルがあるにも関わらず、「深い学び」の推進者の文科省や答申を出した中教審が、「深い学び」をできなくてどうするのだと言いたい。
中教審は、もう一度原点に還って、デジタル教材、デジタル教科書の論点整理を行うべきだろう。それは、
(1)デジタル教科書は、学習効果をもたらすのか
(2)デジタル先進国フィンランドで、「紙への回帰」が起こったのはなぜなのか。
①デジタル教科書の問題点は何か
②克服するには何が必要か
③シンガポールが成功したのはなぜか
(3)運用面において
①「紙」と「デジタル」の教科書採用を誰が決めるのか。両方の採用もありうるのか
②学校のデジタル環境は、デジタル教科書の運用に耐え得るものとなっているのか
(4)デジタル教科書の検定をどのように行うのか。膨大な画像・動画をどのように検定するのか
等が考えられる。とにかく、(1)デジタル教科書は、学習効果をもたらすのか が最大の論点である。
中教審ー文科省よ、本当に「深い学び」をする必要があるのは、あなたたちだ!
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