進学指導は学部から!


 東洋経済のEducation×ICTの記事に、追手門学院大学 客員教授 倉部史記氏の記事が掲載されていた。年間100校を超える高校で進路講演会を行っているという。その中で、同じ進学実績でも進路指導は様々だという話が掲載されていた。例えば、

「毎年呼んでいただいている地方のある公立高校では、『大学入試や受験対策の話は一切しないで大丈夫です』といつも言われます。どこを受験するかは本人に考えさせたい。だが生徒たちを見ていると、どうも身近な狭い世界だけを見て将来を考えている。だからできる限り視野を広げる内容をぜひ、と」
という学校もあれば、
「『受験勉強に集中し、一般選抜でちゃんと国公立大学への進学を目指すような話でお願いします』『私立大学や推薦入試の話は不要なので、一切しないでほしい』」
という学校もあるらしい。どちらがどうという問題ではないと思うが、大学への進学指導で大事なことは別にあるように思う。

 まず、大学受験は、高校受験と違い、学部(場合によっては学科)を受験するという事だ。私が高校生の頃は、このような考えではなかった。私の同級生の多くは大阪大学の工学部をめざしていたが、建築学科を受けたり、電気科や土木科を受けたりしていた。本当に学科と関係する方面に進みたくて受けている受験生もいたかもしれないが、どうも偏差値で選んでいるように見えた。私は、教師をめざしていたので大阪教育大学の特別数学科(高校の免許を取得できる課程)を受けたが、周囲からは「へぇー」という反応だった。将来を見据えて学部を選択するというのは、あまりメジャーではなかったような雰囲気だった。とにかく〇〇大学に行きたいから、片っ端からその大学の学部を受験するという受験をしている同級生の方が多かった。これはいわゆる偏差値による進路指導なのだ。

 教員になって、特に進学校で仕事をするようになってから、自分が経験した大学への進路指導ではダメだという事に気付いた。生徒には、

「●●大学に行くのではなく、●●大学△△学部に行くのだ。だから、大学卒業後も見据えて、どの分野で人生を送りたいかを考えなければならい。端的な例をあげれば、薬剤師になりたければ薬学部に行かなければならないし、モノ作りに従事したければ工学部が妥当だろう。経済学部に行っても、モノ作りに従事できるチャンスは少ない。海外での経済活動をしたいと思っているのなら、国際経済に強い学部で学ぶことが重要だ。だから、自分の将来のビジョンを考えて、まずはどの学部に進学して大学で勉強をするのかを決めよう」

と指導した。生徒たちは、「なるほど!」と思ってくれたと思うのだが、親世代が偏差値に拘るのだ。関関同立レベルに進学させたいとか、産近甲龍は最低ラインとか、言ってくるのだ。この「親の壁」を突破するのが、とても大変だったと実感している。

進路指導とキャリア教育の最大の違いは、「生き方」がその指導に入っているかどうかだ。


コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

PAGE TOP