デジタル教科書の中間まとめ要旨

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文部科学省の中央教育審議会デジタル教科書推進ワーキンググループが2月14日に中間報告をまとめたことは、前日のブログで書いた。そこで、もう一度、読売新聞の「デジタル教科書 中間まとめ要旨」を読んでみた。ポイントは、
①諸外国の対応
②子どもへの健康被害
③子どもの授業への集中度
④学力の向上
の4点である。中教審以外のところで、デジタル教科書の導入の是非について議論されるのはこの4点であろう。導入を前提とすれば、教員の活用能力の問題、ハード面の問題などがあるが、それは、導入するということを前提とした時の課題だ。導入の是非については、①~④の4点であろう。

 そこで、この4点について、中間報告ではどのように記載されているか、読売新聞の要旨から抜き書きしてみよう。

①について
 「国家レベルでデジタル教科書を推進している例としては韓国・エストニアがある一方、スウェーデンのようにデジタル化の見直しを行っている国もある」
と記載されている。これだけ?と思ってしまう。デジタル教科書先進国であるスウェーデンでなぜデジタル教科書から紙の教科書への回帰が起こったか。この点について詳細に分析を行うべきだろう。そうでなければ、同じ過ちを犯す可能性があるのだ。デジタル教科書に踏み出すのなら、余計にこの点を詳細に分析する必要がある。

②子どもへの健康被害
「視力低下などの懸念に関しては、授業時間中、常に手元の教科書やデジタル端末のみを注視させ続けているとすれば、極めて憂慮される問題だ。しかし、実際の授業では「主体的・対話的で深い学び」を促す中で、黒板や大型提示装置など遠くを見ることが多いと想定される」
と記載されている。この文章から読み取れるのは、デジタル教科書では授業時間中に教科書に集中させるのは良くないと読み取れる。教科による特色はあれど、特に、国語の授業などは教科書に書かれている内容を読み取るために、何回も読むのではないか。そういう授業が求められているのではないか。英語も読解を行うためには、何回も英文を読む。社会にしても詳細な資料を読み込むことが必要だろう。「教科書の内容に集中すること」にデジタル教科書では難があると言っているのだ。最後には、「遠くを見ることが多いと想定される」というあくまでも「想定」で終わってしまっている。このような曖昧な現状分析で良いのかと思う。

③授業への集中
「児童生徒が授業と関係のない内容を閲覧して授業に集中しないことがないよう、指針で留意点を提示」
と記載されている。「指針で留意点を提示」したら、子どもが授業と関係のない内容を閲覧することは無くなると思っているのだろうか。閲覧させないためには、教師が子どもに指導をしなければならないのだ。教師は授業の内容及びその教授に集中したいのに、デジタル教科書であるがゆえに、不必要な指導が必要になる。指針で留意すれば解決するという如何にも官僚の発想だ。現場の苦労は何もわかっていない。

④学力の向上
「デジタル学習になれた児童を対象に実証研究を行ったところ、記憶テスト・理解テスト・学力調査いずれも、デジタル教科書は紙の教科書と同等程度の結果だったとする研究結果もある。」
と記載されている。如何にも言い訳がましさを感じる文章だ。デジタル教科書を活用すれば、学力が向上するのならば大いに導入を推進すればよい。ところが、紙の教科書と同程度なのだ。それならば、数々の課題があるにも関わらず、なぜわざわざデジタル教科書を導入するのか。現状のデジタル教材で良いではないか。これが「導入の結論ありき」と言われる所以である。

どうだろう。2030年の学習指導要領の改訂に併せて、デジタル教科書の導入に向けて、文科省は動いているが、これは義務教育に大きな影響をもたらす。国民的な議論が必要ではないだろうか。


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