デジタル教科書の制度を検討してきた中教審のワーキンググループ(WG)は2月14日、第6回会合を開き、大筋を了承したというニュースが、新聞、テレビで報道された。ポイントは、
★紙とデジタルの併用も認める柔軟な設計
★どのような教科書を使うかは、教育委員会の判断
というものだ。デジタル教科書に関する本質的な議論は何ら行われていない。つまるところ、「デジタル教科書は、学力向上に寄与するのですか?」という問題なのだ。寄与することがはっきりしていれば、全国一律に導入することも大事だし、教員がデジタル端末を十分に活用できるための研修も必要だろう。アクセスや通信が十分に機能するようにハード面の充実も重要だと言える。ところが、未だデジタル教科書は、学力向上に寄与するという研究発表がないこと。逆に、寄与しない、または紙と変わりないという研究結果が公にされている。さらに、子どもの集中力の低下や健康被害も報告されているのだ。デジタル教科書先進国は、「紙への回帰」の方向に舵を切っている。このような本質的な議論を一切行わず、結論ありきの文科省の政策に概ね賛同する委員ばかり集めて、議論をさせる。これでは、議論が現場と乖離するのは当然だろう。侃々諤々の議論を中教審で行うべきなのだ。それが中教審の役割だろう。こんなことをやっていて、日本の教育が良くなるはずがない。
一人一台端末は活用しなければならないし、教育のDX化も進めなければならない。ただ、端末をどのように活用するのかについては、慎重な議論が必要だろう。現場でデジタル教材の活用が進まないのも、やはりデジタル教材の活用による副産物があるからだ。丁寧な議論が必要なのである。
これから2030年の学習指導要領の改訂に向けてデジタル教科書の法制化に向けた議論が進んでいくのだろうが、本質的な議論はどこで行われるのだろうか。やはり、国会で行うべきだろう。政権与党が少数派になって、政権変容が現実のものとなった今、国会の風景はずいぶん変わった。実質的な予算審議が与野党間で行われているのだ。立憲民主党は、個々の課題ではなく、予算パッケージとして、無駄な予算、必要な予算を示した。こういうように与野党間で真剣な議論が必要になる。デジタル教科書についても、国会で党派を超えた真剣な議論が必要となるだろう。
最後に一言。教育の中立性を担保するがゆえに、中教審のような独立機関を文科省の下に置いて議論をしているが、こんな文科省の政策を是認するだけの中教審の議論ならば、議論する意味がない。国会の文教科学委員会で真剣な議論をしてほしい。
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