高校無償化のNHK報道

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 2月7日の夜9時からのNHKニュースで、高校無償化が大きく取り上げられていた。国会では、与党と日本維新の会での協議が進み、25年度からは公立高校の無償化、26年度からは私立高校の無償化という与党案に対して、日本維新の会は、公私とも25年度からの実施を求めている。NHKは、東京と大阪で実施されている高校無償化でどのような状況になっているのか、大阪府大東市の私立高校と府立高校を取材していた。

 私立高校は、四条畷学園高校。wifiが完備された校舎、居心地がよさそうな図書館、探究的な学びを積極的に行う生徒達と、良い面が存分にアピールされていた。一方、公立高校は野崎高校である。正直言ってかなりしんどい高校である。ちらっと写った女子生徒の後ろ姿も、茶髪に着崩した制服に体操服のズボンをはく、通称大阪で言われる「埴輪ルック」である。印象は良くない。校長のインタビューでも「6年連続の定員割れ」ということも出てきた。ただ、スクールソーシャルワーカーを配置し、手厚い指導をしてしており、セーフティネットとしての役割を果たしているというところをアピールされていた。視聴者は、この二つの「画」をどのように受け止めるだろうか。

 そんなことを思っていた昨晩だったが、今日の読売新聞の地方版に、公立高校の進路調査結果が出ていた。128校中、72校の定員割れである。こういう事実こそしっかりと報道すべきではないだろうか。何回も言うようだが、大阪府教育基本条例により、「3年連続定員割れ」ということになれば、再編対象校になる。これが大阪維新の会の方針だ。この条例を巡って、大阪維新の会の議員と教育庁の間でし烈な議論があったと聞いている。24年度入試に続き、25年度入試も定員割れになれば、2年連続。この受験地図が好転しない限り、26年度入試も同じ傾向が続くだろう。そうすれば、一体何校が再編対象になるのだろう。公立高校の公私の無償化で、公立高校がどんどん潰れていくのだ。これこそ、NHKが取り上げるべき論点ではないか。

 最後に専門家と思われる人のコメントが報道された。日本大学の末富教授は、「公立高校も生徒のニーズをとらえた教育に一層力を入れる必要がある」とコメントしていた。正直に言う。この人、学校現場を知っているのかと思った。大阪府立高校の校長は、私立高校との生徒獲得競争を必死にやっているのだ。しかし、もうこの無償化制度で、個々の学校の努力ではどうにもならないところに来てしまっている。一方、政府の経済財政諮問会議の民間委員である中空氏は、年収910万円以上の家庭にも無償化することへの疑問を呈し、「財源を投じるのなら、公立高校のレベルアップに投じるべき」とコメントした。まったくその通りだろう。

 更に、最後に持論を書く。生徒獲得競争を平等にするために、「公私の同日入試」を実現すべきだ。これを嫌がって、先行入試を実施したい私学は、無償化の対象から外せばよい。少子化が進む中で、私立高校にも「退場」してもらわなければならない学校もある。維新の会が得意の民意、市場原理を働かせるためにも、同日入試が求められる。


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