親は、社会の入り口


 11月2日の読売新聞「人生案内」に4児の父から、こんな相談があった。「長男が中学生になった数年前から、長男、次男の勉強や生活態度を厳しく叱責することが増えました」「私立高校に通う長男は、在学中に海外留学することを望んでいますが、夜更かし、ゲーム三昧で、勉強習慣が身についているとはいえません」というものだ。そして、4児を育てる教育費・養育費もばかにならず、高額な留学費用を捻出するのも悩みの種だという。ところが、長男は、留学に向けて必死に勉強している姿が見えないので、「必死に英語を学びたいという姿勢がないなら、留学でなく旅行だ。海外旅行へ行かせる余裕はない」と大声を上げて叱責してしまい、自己嫌悪に陥ってしまうという相談だ。

 これに対して、教育評論家の尾木氏は、次のように回答している。
「子どもは別人格であり、親の思い通りにはなりません」
「留学前に必要な力をイメージし準備に励む姿を長男に期待するのは、高望みかもしれません。」
「長男に今の正直な気持ちを聞いてみるのもいいですね。・・・胸を開いて話してみることです。」
と。

 尾木氏の言われるところも一理あると言えばあるが、ちょっと違うのではないか。このお父さんは、「留学したいなら、やるべきことをやれ。」と長男に言っているのであって、親として当然のことである。ましてや、自分の金で行くわけではなく、親に留学費用を出してもらっていくのだから、「何をお前は、甘えているんだ!」となるだろう。そして、重要なことは、これが社会の常識であるということだ。高校生にもなっているのだから、これからは社会の常識を身に着けてもらわなくてはならない。親として当然の要求であり、また子育てとして当然やるべきことだろう。だから、「子どもは別人格」とか「高望み」とか、と言っている場合ではなく、まずは

「親として当然のことを、お父さんは言っていますよ!あなたは正しい!」

と尾木氏は言わなくてはならない。その上で、「しかし、激高してはいけない。子どもを大人として扱いましょう。お父さんも大人相手に激高したらどうなるか、ご理解できると思います。」「ここは、まずは、理詰めで話をし、社会のあり様を教えましょう。そして、最後にお父さんの気持ちを伝え、長男の言い分を聞いてあげましょう」と回答するべきではないかと思う。

尾木氏のような回答をしていると、若者は社会の理を理解しないままに大人になってしまう。親は、家庭の親であるとともに、社会への入り口でもある。特に、中学・高校と子供が成長するにつれ、社会の常識を親は教えなければならない。そのために、親は壁になることも重要だ。


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