10月24日の読売新聞「再考デジタル教育 下」で高校段階での学習用端末購入に関わる負担問題が取り上げられていた。23府県が公費負担、24都道府県が保護者購入を原則としているという。個人が使用する教材と考えれば、保護者負担というのが原則になるだろうが、他の教材と違い学習用端末は高額なのだ。周辺機器も合わせると、約10万円というのが相場だろう。高校が義務教育ではないとはいえ、高校入学と同時に10万円の負担は大きい。高校の授業料の無償化が進む方向とは、逆の方向になっている。
そうすれば、公費負担が良いのかというと、なかなか難しい。公費で負担していると1年または3年間使用すれば、返却するということになる。教材を閲覧するだけに使用するなら大丈夫かもしれないが、現実はそうではないだろう。これだけ探究学習が求められ、そして実際に行われている状況では、学習の成果物も学習の軌跡も端末の中に蓄積していく。公費で負担した学習用端末では、進級や卒業後も継続して学習をしていくことに支障が出かねないのだ。USBなどに保存すれば良いではないか思うが、学習の軌跡までは保存が難しい。教科書は永久に手元に残ることに比べて、3年経てば手放さなくてはならない学習ツールというのは、どうなのだろうと思う。行政側も故障すれば修理しなければならず、修理不可になれば新しい端末を購入しなければならない。保険を掛けるという手もあるが、公費負担は大きい。保護者負担にすれば、故障費も個人負担、卒業後も生徒のものとなり継続的に使用できる。なかなか、悩ましい問題である。
「再考デジタル教育」の連載も上中下が掲載されたので、これで終わりだろう。「上」で、スウェーデンの例が掲載され、デジタル教科書の学習成果が教科書を使うときよりも、様々な問題があることが示された。しかし、これは実践としての例示なのである。重要なことは、学術的にデジタル教科書を使用して、学習効果が紙の教科書を上回るのかという問題だ。上回らない、もしくは同等であるということを考えるならば、デジタル教科書使用の煩雑さやコストの事を考えれば、紙の教科書ということになるだろう。この点の白黒を読売新聞もはっきりさせてほしかったと思う。今までの学術研究では、デジタル教科書の学習成果は、良く見積もって紙の教科書と同等という結果は出ているが、せっかく連載するなら新しい知見を示してほしかった。
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