新・ドキュメント太平洋戦争1944 絶望の空の下

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 戦争が終わり、敗戦が決まった8月15日に、NHKで特別番組が報道された「新・ドキュメント太平洋戦争1944 絶望の空の下」だ。75分間の報道だったが、食い入るように見てしまった。トイレに行くことさえしなかった。このドキュメントの企画は、戦争のさなかで生きて、もしくは命を失った方の一人一人の手記で構成されていた。当時を生きた人たちのまさに「生の声」である。これが戦争なんだと、まさに実感させる内容だった。サイパンでの玉砕と言われるが、その玉砕の中身は何だったのか、一人の少女の目線で語られるのは凄まじかった。
 番組を観ていて、あまり強調されなかった点が気になった。アメリカ軍がサイパンに上陸して、日本軍と日本人は、島の北部に逃げた。アメリカ人は、投降を呼びかけたが、「民間人を前に出して、後ろから日本軍が発砲してくる」というナレーションがあった。アメリカ兵にとっては、恐怖だろう。日本人を見たら、それが民間人であってもその後ろには日本兵がいるのだ。そう思わせてしまう。少女の家族が少量の水を得て、鮭缶で夕食を取る。これが最後の晩餐だった。翌朝、母と少女が用を足すために、防空壕を10m離れた。そうすると人影がある。すぐに銃声が聞こえ、少女の前で母が倒れる。番組では、報道されなかったが、もし日本軍の民間人を盾にするような行為が無かったら、アメリカ兵もすぐには発砲しなかったのではないかと思う。相手は女性と子どもなのだ。
 以上の事は、あまり番組では、クローズアップされなかった。しかし、私の中でかなり印象強く残った。昔、どこかで司馬さんが語った「所詮、軍隊というものは、自分の身を守るものであって、国民を守るものでなかった」ということを思い出した。全てが全て、そうであるとは思わないが、軍隊というのは、追いつめられればそういう面が表に出てくるということだろう。多くの民間人を巻き込んだ沖縄戦がそうではないかと思う。

 戦争を終結させるのは本当に難しいと書いた。サイパンが陥落し、日本本土への制空権がとられた時点で、戦争終結をすべきだっただろう。そうすれば、多くの民間人を巻き込んだ沖縄戦も無く、都市部への空襲も無く、ましてや原爆投下も無かったのではないか。逆に日本軍は、一撃を与え、有利な条件での講和を考え、特攻作戦に踏み出す。一億玉砕がスローガンだった。サイパン陥落の際述べた日本軍の幹部のコメントに呆れかえった。合理的な考え、人命を尊重する考えが、如何になかったか。こんなバカな奴らが戦争を主導するような国だったのだと改めて思った。

この番組は、秀逸である。是非、見てほしい。


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