民主党と共和党のねじれ


 8月5日の読売新聞に面白い記事が出ていた。「竹森俊平の世界潮流」である。テーマは、アメリカの白人貧困層である。先進16か国の死亡率を基準にして測ると、米国の死亡率は80歳以下の全ての年齢層で上昇しており、近年の上昇は特に著しいという。死因の原因は、「アルコール中毒」「麻薬性鎮静剤の過剰摂取」「自殺」などで、まとめて「絶望死」と言われるものである。
 一方、欧州での「絶望死」は、フランス・ドイツの死亡率は減少傾向にある。イギリスは増加傾向にあったが、近年は減少傾向にある。この二つの現状について、ペンシルベニア大学のスターリング教授は、米国と欧州の公的支援の差に原因を求めている。なるほどと思わせる。元々アメリカでは、公的支援に関する理解が弱い。民主党は「大きな政府」を標榜し、近年では「オバマケア」と言われる施策を実行した。しかし、トランプが大統領になったとき、真っ先に否定したのがこの施策である。伝統的に共和党は「小さい政府」を志向する。
 ここで、不思議なのは、公的支援が必要である米国白人が、なぜか公的支援に消極的なトランプ候補を支持していることだ。この層の支持を得るために、まさに「白人貧困層の代表」と言っていいバンス氏を副大統領候補に抜擢した。本来ならば、白人貧困層ほど民主党支持でなければならないはずである。この点について、竹森氏は、トランプ氏の戦略を次のように指摘している。
「自分の弱さを認めて助けを求めるくらいなら、第三者に責任を押し付ける」ことを望む白人貧困層の傷ついた自尊心に付け込む政治戦略
であると。そして、そのすぐ後に、
「実行されてもこの層の将来は拓けるわけではない」
と断じている。まさにその通りだ。ハリス氏は、「低所得者層にも加入できる医療保険制度や育児制度の拡充」というテーマを掲げた。白人貧困層が待ち望んでいる政策のはずだ。いい加減、白人貧困層も目覚めるべきだろう。

 今、バーバラ・ウォルター氏の「アメリカは内戦に向かうのか」を読んでいる。まだ、アメリカにはたどり着かず、今まで発生した数々の内戦の分析の段階だ。アメリカで大ヒット中の「CIVIL WAR」を考えると、すぐそこに危機が訪れているように思う。


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