「虎に翼」の新潟編を観て思うのは、戦後10年を近くを経っても、戦争の傷跡はとても大きいということだ。一人一人の国民の中に、「戦争」という深くて暗くて、とても痛い黒い思い出が、どっしりと居座ってしまっている。杉田弁護士の号泣もそうだし、星判事の「ごめんなさい」に込められた深い意味もそうだった。そして、もう一つのテーマが、憲法14条だ。よねさんが事務所の壁に大書した
「すべて国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。 華族その他の貴族の制度は、これを認めない。 栄誉、勲章その他の栄典の授与は、いかなる特権も伴はない。」
である。寅子は、この条項に戦後社会の希望を見出していた。寅子だけではなく、一緒に学んだ同窓生がそうだった。しかし、現実はそう簡単ではないという事を新潟で思い知らされる。一つは、在日朝鮮人に対する偏見と差別。そして、玉ちゃんの心の重しとなっている障がい。そして14条ゆえに、華族としての生活が終わった涼子さんの苦労である。
これらのテーマは、令和になってさえも私たちが考えなければならないテーマである。昭和23年に新憲法下で成立した優性保護法は、平成の時代まで続いた。この法律のために、どれだけ多くの障がいがある人が悲しい思いをしたのか。やっと損害賠償を認められ、国は正式に謝罪し、和解に応じることになった。令和6年、2024年である。新憲法が制定されてからどれだけ経っているのだと言いたい。
護憲、改憲というとどうしても憲法9条の問題がクローズアップされる。それもとても大事な事である。しかし、この「虎に翼」は、憲法14条が、どれだけ日本に根付いてきたのかという問題を、私たちに突き付けているのではないかと思う。日本には、被差別部落に関する問題、在日朝鮮人問題、障がい者問題、アイヌ民族の問題、そして女性問題、LGBTQの問題など、まだまだマイノリティに関する問題が積み残っている。一人一人の日本人の心の中に、この憲法14条の精神が、どれだけ浸透しているか、それが問われている朝ドラだと思う。
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