市まるごと探究の街に!

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 河内長野市の市長選が行われ、長年河内長野市選出の府会議員である西野修平氏が、無投票で当選した。河内長野市は、府知事の吉村氏の地元であるが、大阪維新の会は立候補者も出すことができなかった。それほど、西野氏の河内長野市での力は圧倒的だったのだろう。西野氏のスローガンは、「脱 消滅可能性自治体」である。河内長野市は、少子高齢化率が大阪府の中でもかなり深刻な自治体である。このスローガンは的を得ているだろう。消滅可能性自治体を脱するためには、多くの人に移住してもらわなくてはならない。特に子育て世代にターゲットを当てて、河内長野市に住もうじゃないかと思ってもらうことが必要だ。そのために、西野氏は、「5つの矢」を掲げている。
 1の矢 「子育て3.0」次世代への投資にシフト!
 2の矢 「教育3.0」個を活かす多様な学びへ!
 3の矢 人・モノが集まる「結節点化」をスピードアップ!
 4の矢 「自己実現」が可能で、ウェルビーイングな河内長野へ!
 5の矢 府内で「最も健康長寿」のまちへ!
である。この中で、「町の商品化」を掲げ、稼げる河内長野を掲げているのは、なかなか面白い発想だと思う。この町がどのように西野市長の下で変化していくのか、楽しみである。

 さて、ここからが本題だ。先にも述べたが、消滅可能性自治体を脱するためには、人が移り住んでこなければならない。持続可能性を考えれば、特に子育て世代に移住してもらわなければならない。河内長野市は、南海高野線で難波まで約30分強、梅田までも1時間はかからない位置にある。交通の便を考えると、それほど不便なところにあるわけではない。しかし、都市部と河内長野市の間には、政令指定都市の堺市があり、ニュータウンを抱える大阪狭山市や富田林市があるのだ。これらの自治体を飛び越えて、河内長野市に子育て世代に移住してもらわなければならない。そのためには、二つの事が必要だ。一つは、行政サービスである。近隣の子育て行政サービスと同等か、それ以上のサービスが必要になる。これについては、明石市の実践がとても参考になるだろう。子育てしやすい環境を如何に整備するか。お金のかかることであるが、環境を整備することが必要だろう。もしかしたら、高齢化世代に負担を強いることになるかもしれない。人口減少が進んでいる地方では、高校を地元から無くさないために、地元住民に負担をお願いしているところもあるぐらいだ。ここは、西野新市長の手腕が試されるのではないだろうか。
 もう一つ重要なことは、教育のソフト面だ。「2の矢 『教育3.0』個を活かす多様な学び!」には、「自由進度学習による個別最適な学びの環境へ!自主性と探求心を育み自己肯定感が高まる学びへ」と記載されている。少し、抽象的で具体的に何をするのか不明瞭な部分がある。個別最適な学びについては、AIツールの導入が考えられる。教育現場で導入され、高評価を得ているのは「Qubena」である。このようなAIツールの導入が、個別最適化教育には、必須である。教育行政として支援を考える必要があるだろう。
 さらに、重要なことは、「探求心を育み」である。現在の学習指導要領では、小学校から高校まで探究が重視され、小中では「総合的な学習の時間」、高校では「総合的な探究の時間」が活用されている。探究学習では、知識・技能の習得は前提とし、その知識・技能を如何に活用するのかを通じて、思考・判断・表現の力を育てることを目標としている。様々な難題に立ち向かわなければならない日本社会を担う若者には、多角的な視点で疑問を感じ、問いを立て、正解のない課題に立ち向かい、最適解を導き出す探究が重要な役割を果たすのだ。「脱消滅可能性自治体」を脱するためには、近隣自治体では取組んでいない「市まるごとの探究学習」が重要ではないかと思う。
 探究を軸に据えた教育で実績を挙げている自治体がある。一つは、島根県隠岐島前高校の取り組みであり、もう一つは国際バカロレア認定校である。高知県の香美市立大宮小学校(香美市香北町)などは、山間の町であるにも関わらず、特色ある教育に魅力を感じて、移住する人さえいる。他に自治体に無い特色ある教育をどのように展開するか。子育て世代に移住してもらうためには、行政サービスと合わせて、教育の中身が問われると思う。幸いにも、河内長野市は、全市立学校がコミュニティスクールに認定されており、地域が学校を支える環境はできている。これを土台に、探究学習をベースにした教育の特色化が、河内長野市の魅力となると思う。

公立小初、中山間校「国際バカロレア認定」の裏側


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