WHYを語る石丸伸二


 なぜ、「石丸現象」が起こったか?気になったので、彼の演説の動画を見てみた。そうすると、何となくわかる。彼はどこの会場でも同じようなことを短時間(20分ほど)しか話さないらしい。そして、彼は都知事になって何を(what)をどのように(how)するのかをほとんど語らない。語るのは、whyだ。なぜ、都知事の選挙に都民が参加しなければならないのか、それのみを語っている。彼が言うには、「緊張感が無くなると、変な政策が出てくる。緊張感があればよい政策が生まれる。だから、選挙で選んでおわりではなく、ここからがスタートだ」と。まさに、住民参加の自治を説いているのだ。おそらく、こんなことを最初から最後まで言う政治家も珍しいのではないか。支持政党がある人は、それなりに政治参加の意思がある。ところが、「最大政党」である無党派層は、自分たちが自治の主役であることを忘れているのだ。だから、投票に行かない。政治に関心を持たない。だが、これだけ、生活が苦しくなり、閉塞感がある中で、自民党の腐敗した政治を見せつけられると、不満も沸騰点に達する。その膨れに膨れた不満の風船に、一穴を突いたのが、石丸伸二なのではないだろうか。だから、彼の演説に人が集まる。演説を聞いた人は、拡散しようとするのだ。私たちが、政治に無関心だと政治はますます悪くなり、そして腐ってくるのだと石丸伸二が教えてくれたのだと思う。

 これは、既存の政党ではできないだろう。改革政党として旗揚げした日本維新の会も、政治とカネの問題で変な合意を自民党としてしまい、そして迷走した。創設者の橋下氏が批判するように、「国民にはとても分かりにくい」のだ。変なところで、自民党の延命に手を貸してしまうから、失速してしまう。もう一度、改革政党として原点に立ち戻ることが必要だろう。一旦ついてしまったイメージは、なかなか払しょくし難いだろうが。次期衆院選には、馬場代表の交代くらいの荒療治が必要かもしれない。

 立憲民主党は、かなりショックだろう。蓮舫氏は2位にもなれなかったのだから。敗因は明確だ。国政の与野党対決を地方自治に持ち込んだからだ。確かに、日本の地方選挙の中で、東京都知事選は国政選挙に近い。だが、衆議院補選で連勝したからと言って、それをそのまま都知事選に持ち込んで、勝利できるほど選挙は甘くない。都民を舐めてはいけない。それも、都政で一定の成果を挙げている小池氏が相手なのだ。都政を「リセット」されたら困る都民も多くいることを立憲民主党は理解していないのだろう。昨日も書いたが、小池都政を上回るビジョンを蓮舫氏は示すべきだった。世界に通用する都市である東京にするために、グローバルな視野で語るべきだったのだろう。これが、共産党と組んだ立憲民主党の野党体質の限界と言える。

 既存政党は、もう一度選挙戦略、というよりは、党としてのアイデンティティが問われることになるだろう。そうでないと、石丸現象には太刀打ちできない。


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