言霊の国、日本

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 5月3日は、憲法記念日である。この日に合わせて各紙が世論調査を実施する。読売新聞も1面に世論調査の結果を発表した。その結果、憲法を改正する方が良いとの回答が、63%に達し、郵送方式に調査を変更した2015年以降、最も高かった。また、戦力の不保持を定めた9条2項についても改正の必要があるとの回答が53%に達し、過去最高となった。当たり前だろうと思う。もっと改憲派が増えても良いのではないか。ロシア・中国・北朝鮮という好戦的な専制主義国家に囲まれた日本の安全保障を考えたときに、日本の安全保障のための軍事力を強化しなければならないのは、誰が考えても自明の理だからだ。しかし、改憲派が多数になったとはいえ、まだまだ少ない。それはなぜか?

 日本が言霊の国だからだ。口にした言葉には力が宿っており、実現すると考えているからだ。だから、他国(前述の3国が想定される)が攻めてくる、有事が起こると口にしたくない。議論すれば、本当に起こると思っているからだ。これでは、危機管理などはできない。なんとおめでたい国かと思う。
 各党の談話を調べてみた。護憲派勢力の中心である社民党と共産党は次のように述べている。

社民党 日本が再び「戦争する国」への道を進もうとしている。抑止力の名の下で進む不毛な防衛費増大・軍拡競争に反対する。平和憲法の下、命と暮らしが最優先される社会を目指す。
共産党 憲法の平和原則を根底から覆す歴史的暴挙を断じて許すことはできない。日本に求められるのは9条を生かした外交だ。自民党政治を終わらせ、希望ある政治へと変える。
(時事通信 政治部)

 誰も軍事増強は望んでいない。そんな金があるなら、国民の生活の向上に使ってほしいと誰しもが思うだろう。しかし、日本の国民が平和を望んでも、周辺の国々が同じように平和を望んでいるわけではないのだ。中国は、明らかに覇権の拡張を狙っている。中国とフィリピンの間で起こっている海洋を巡る戦いは、日本の近未来だ。北朝鮮はミサイルをバンバン飛ばしているではないか。ロシアも極東で軍事訓練を行っている。社民党のいう「不毛な防衛費増大」とは何を意味するのか。共産党の言う「9条を活かした外交」とは具体的に何なのか。勝手に理想を語っているならそれでも良い。しかし、少なくとも国会に議席を持つ公党なのだ。もっとリアリズムに立脚した議論がなぜできない。

立憲民主党 憲法改正は業績作りのために進められるものではない。国会議論に慎重かつ真摯(しんし)に臨む。裏金を手にし、法律すら守れなかった自民党に改正を任せることはできない。(時事通信 政治部)

そして、立憲民主党は、議論に極めて消極的である。これでは、敵失でしか議席を獲得できないだろう。自らの党内で憲法に関する意見がまとめられないということは、国民はみんな知っている。だから、議論から逃げていることも知っているのだ。

 さて、このブログ、教育関係をテーマに更新し続けているが、時事問題も扱っている。なぜか。日本の教師たち、教育関係者たちが時事問題に疎いからである。時事問題を語れない教師に、時事問題に興味を持つ若者は育てられない。だから、時事問題も必要と思ってブログを書いている。なぜ、日本の教師は時事問題に疎いか。それは、教育の分野を「聖」の分野と考え、時事問題、特に政治に関する分野を「穢」の分野と考えているふしがあるからだ。教師は、「私たちは、純粋な穢れの無い子どもたちを相手に仕事をしている。だから、世の中の穢れた事象に関わることは避けたほうが良い」と心のどこかで思っているのである。このような教師たちに、教育基本法に定められた政治教育はできない。政治教育の必要性が、法にきちんと明記されているにもかかわらず、日本で政治教育が行われないのは、このことが原因ではないかと考えている。


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