買い物難民

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 昨日、親父をユニクロに連れて行った。親父は、1年前から老人ホームで暮らしている。それまで一人暮らしをしていた。体調を崩したこともあり、「もう一人で住むのがしんどい」と老人ホームへの入居を希望したのだ。私も兵庫県での仕事を辞めて、誰も住まなくなった実家に戻ってきた。
 さて、ユニクロの話である。なぜ、ユニクロに親父を連れて行ったか。夏物のスラックスが欲しいと言ったのだ。以前にもユニクロで買い物をしたことがあり、今着ているスラックスもユニクロだ。親父は、ユニクロを気に入ったらしい。スラックス2本と夏物の上着2着を買った。親父は、身長160㎝なので、今の日本人を標準サイズにしたユニクロの既製品には、合うサイズが無い。仕方なく試着し、補整してもらうことにした。しかし、90歳を迎えようとする親父の試着は、思った以上に時間がかかった。試着するのが老人ということを察し、店員が椅子のある試着室を用意してくれたのは、さすがというほかない。気配りが行き届いている。
 さて、精算である。ご存じのようにユニクロの精算は、客が自分でするようになっている。籠を指定されたところに置き、あとはタッチパネルで自分で行う。親父にも見せてやろうと思い、精算に立ち合わせた。全てが終わって親父が一言言った。
    「俺には無理や」「これでは買い物ができない」
まさに、その通りだ。技術が進歩して便利になった。レジに携わる人員も減らすことができ、より効率的になった。その分、利益も上がるだろう。しかし、あまりにも急激に技術が進歩するために、高齢者にはついていけない。こうやって買い物難民が増加するのだと思った。こんなことを言っている私も60歳を過ぎている。あと、10年もしないうちに技術が進んで、買い物難民になるかもしれない。いや、おそらくなるだろう。AIの進歩が著しいからだ。今まで、IT技術の革新にはついていこうと努力してきたが、AIとなると話が違うようになるだろう。AIを相手に買い物をすることも遠くは無いだろう。いや、待てよ。老人でも精算ができるような、AIを活用したレジが開発されるかもしれない。何せ、日本は老人大国になるのだから。少し前に、日本の世帯当たりの人数が2を割り込むという話題が報じられた。そうなのだ。独居老人がこれからどんどん増えてくるのだ。
 「老人に優しい国」、これがめざすべき日本なのかもしれない。世界の模範になるだろう。


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