私立清風高校で指導死か?


 2021年に私立清風高校の2年生男子生徒が、自死した。この件に関して、生徒の両親が教師の圧迫的な指導が原因だとして、1億円の損害賠償請求を求めて大阪地裁に提訴した。
 それでは、どんな指導を受けたのだろうか。生徒がカンニング行為をしたことについて、
①全科目零点
②写経80巻
③進路に関して学校推薦を行わない
④自宅謹慎8日
などで、この指導の過程で、多数の教師に囲まれて叱責され、「卑怯者」と言われたと主張している。遺書には、「卑怯者と思われながら生きていくのが怖い」と書かれていた。学校側が設置した第三者委員会は「指導が自殺に追い込んだとは言えない」と判断しているという。

 まず、①の全科目零点というのは、大阪府立高校では、かなり前に懲戒規定を変更した。私が教師になった頃は、カンニング行為は全科目零点で停学であった。しかし、全科目零点と停学は二重の懲罰であるとして、カンニング行為のあった当該教科だけ、「正当に評価できない」という理由でゼロ点となった。この点から考えると、④の自宅謹慎が実施されていることから、清風高校の指導は、二重の懲罰に該当する。
 さらに、②である。写経80巻というのは、相当な量である。これが妥当な指導と言えるかという問題だ。社会通念上、妥当な指導かどうかということが論点になる。学校は、写経80巻にどれだけの労力がかかると判断していたのだろうか。この点も大きな問題だ。
 ③については、学校長が推薦に値する生徒かどうかの判断を行うのであるから、このような行為をした生徒が、校長の推薦に値しないという判断はありうる。最大の問題は、保護者のいう「多数の教師に囲まれて『卑怯者』と言われた」という指導だろう。確かに、カンニングは卑怯な行為である。義務教育と違って、単位認定の正当性に関係してくる話なので、大きな問題である。学校の指導で必要なことは、本人が「自分が卑怯なことをしてしまった」と自覚できるように指導することで、(保護者の言うことが事実とすれば)「卑怯者」とレッテルを貼ることではない。人格否定ではなく、行為を問題としなければならない。指導する上で、とても重要なことだ。
 この事件の後、2日後に飛び降りにより自死したということであるから、相当本人は傷ついたのではないかと思う。事実経過を考えると学校が設置した第三者委員会の「指導が自殺に追い込んだとは言えない」という見解も、「果たしてそうなのか?」という大きな疑問を持つ。

これでは、訴訟になることもやむを得ないであろう。


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