門真市中学校いじめ事案


 3月19日、門真市教育委員会は、令和4年に自死した生徒の事案で、第三者委員会の報告を行った。自死した生徒は、中学1年から3年までいじめに遭い、その結果、高校入学直前に自死したという事案である。また、この事案については、当該の中学校が一度も当該生徒へのいじめを認定せず、組織的な対応を取っていないことを、第三者委員会は厳しく指摘している。私は、この報告書に目を通してみた。教育に携わる者は、この報告書に目を通すべきではないかと思う。なぜなら、教師が陥りやすい問題を指摘しているからである。

 なぜ、学校はいじめと認定しなかったか。SNSで交わされている内容は明らかにいじめであり、いじめアンケートでも当該生徒は訴えており、保護者も学校に訴えている。それにも関わらず、なぜ学校は「いじめ事案」として対応しなかったか。それは、第三者委員会の次の文書に表されている。

「本生徒は、人なつこい性格で、友達と遊びたい、関りを持ちたい、という思いが強かった。そのため、自ら友達に声をかけたり、ちょっかいをかけに行ったりすることが多かった。
 また、本生徒は、たとえば友だちから嫌なことをされても、謝ってくれたら許す、という、さっぱりした性格でもあった。
 併せて、本生徒には、友だちや父母などを心配させたくないという思いが強くあり、自分のしんどさを表に出さず、辛いことがあっても、あたかも、さほど大きな打撃を受けていない、大丈夫である、というように振る舞うところがあった。
 他方で、本生徒には、人との距離感がわかりにくい、自分の考えをうまく言葉で表現できないことが多い、他者の気持ちを推測する力が十分でなく、相手や周りの気持ちをくめずに、悪意なく他者を傷つけることがある、自分の気持ちをわかってもらえないと思い込みやすく、その結果、自尊心を低下させやすい傾向がある等の特性があった。
 そのため、小学3年時には、頭に血が上って壁やものを蹴ったり、怒鳴ったりする等の行動、小学4年時には、思い通りいかないと感じた際に友人を殴るなどの行動があり、小学5年時や小学6年時には、友人との衝突などがあった。」(報告書:p43)

「本生徒については、中学校入学時点において、小学校時代の問題行動や友人関係トラブルの多さ等の困難な生徒指導に関する情報等が主として引き継がれていたことや、入学後においても友人関係トラブルが続いていたために、本生徒は、1年時から主として生徒指導の対象として捉えられ、いじめ被害者として支援すべき対象として見られることがなかったものと思われる。」(同:p73)

どうだろうか。教員がミスをしてしまいがちな生徒ではないか。このような生徒は、どこにでもいる。中学校の教員たちは、小学校からの情報から、この生徒を「生徒指導の対象」として見てしまい、「支援が必要な生徒」として見る視点が欠けていたようだ。この点は、報告書にも厳しく指摘されている。このような生徒は、生徒間のトラブル、人間関係のトラブルを起こしがちである。周囲もまだまだ発達途上の中学生である。どのように人間関係を構築したらよいのか、当人も周囲も分からない中で、互いにストレスばかりが募っていく。そのストレスは、すぐさまいじめに転嫁するのが、この成長段階の子どもたちだ。

 教員(学校)は、このような資質と特性をもった生徒が、「いじめの対象になる」という視点を持たなければならない。また、この視点だけではだめだ。「どのような支援が必要か」という視点も必要である。社会生活を送るにあたって、どのように人間関係を構築する必要があるのか。生徒個人にも、生徒集団全体にも教育する必要がある。私は、先輩から若い頃によく教えられた。「困った生徒は、困っている生徒だ!」と。この視点を失ってはいけない。学校関係者は、この第三者報告書を読むべきだ。

門真市いじめ重大事案報告書


コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

PAGE TOP