これが選挙イヤー


 2月4日の読売新聞の国際面が面白かった。アメリカの大統領選挙とロシアの大統領選挙の話題が取り上げられている。まずは、ロシアだ。これは、結論から言えば、さもありなんと思わせる内容である。今回の大統領選挙で、唯一ウクライナ侵略に反対を訴える候補者であるボリス・ナデジディン氏の話だ。立候補に必要な10万人を超える署名を提出したのだが、さっそくプーチンサイドのメディアや著名人から一斉非難を受けているというのである。もしかすると、立候補を認められないかもしれない。これこそ、世にいう陰謀である。弱い犬ほどよく吠えるの典型だろう。プーチンが如何に小心者であるかがよくわかる。
 次にアメリカだ。私は全然知らないのだが、アメリカの人気歌手テイラー・スウィフトさんに対してトランプ派から攻撃が加えられているという。彼女は、インスタグラムのフォロワーが2億7900万人を超えるらしい。すごいインフルエンサーだ。彼女は、前回の大統領選でバイデン氏を指示した。このことに、トランプ派が警戒感を示しているのである。保守系のFOXニュースの司会者が、「政治に関わらないで。あなたがそこにいるのを見たくない」と言ったのだ。アメリカの民主主義というのは、こんなものかと思う。日本で、報道番組の司会者がこんな発言をしたら、即降板になるだろう。明らかに参政権を踏みにじる人権侵害だ。よくも言えたものである。先に述べたロシアの選挙状況とどこが違うのかと言いたい。

 日本のテレビでも「もしトラ」とか「ほぼトラ」とか言われているが、トランプ氏が大統領になったら、世界が混乱の極致に陥る。まさに一寸先は闇になるだろう。専門家の中には、「だからこそ、ロシアも中国も北朝鮮も、そしてイランも警戒感を増して、委縮するだろう」という人がいるが、果たして、それでいいのだろうか。
 塩野七生さんのギリシャ人の物語も第3巻の終わりに近づいた。もう、アテネもスパルタもテーベも覇権都市国家から脱落し、いまやマケドニアのフィリッポスの時代だ。彼の子どもがかの有名なアレキサンダー大王なのだが、フィリッポスがギリシャを支配しようとしているのである。アテネは古代民主主義の象徴だが、民主主義が、また衆愚政治と紙一枚の差でしかないこともアテネの歴史は物語っている。民主制の絶頂期には、ペリクレスしかいなかったが、彼は民主制とは何かをきちんと理解し、そしてその維持発展に努め、ペルシアに対抗するためのデロス同盟を設立した。そこには、理念もビジョンもストラテジーもあるのである。しかし、このことを全うできる人間がいなくなった時、民主制は、衆愚政治そのものになってしまう。

 「もしトラ」の実現したアメリカは、果たして民主主義国家と言えるのか。アメリカファーストは、アメリカ人のエゴではないのか。そんなことを考える今日の新聞の国際面だった。ふと思った。裏金に走る自民党の議員を選ぶ日本の政治は、もうどっぷり衆愚政治ではないかと。


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