台湾総統選に学ぶ

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 選挙イヤーの今年、台湾総統選の選挙が行われ、民進党の頼候補が当選した。中国との距離をおく現状維持派の頼氏が当選したことで、まずは日本としてはホッと胸をなでおろすことができたのではないか。次は、習近平氏の出方とアメリカ大統領選挙だろう。相変わらず共和党はトランプ氏の1強だが、選挙の行方に注視していきたい。
 ところで、この台湾総統選、日本が学ばなければならない点が、多々ある。まずは、投票率の高さだろう。70%を超える投票率は、国民の政治への関心の高さを物語る。また、若者の政治意識も高い。第3党の柯氏は、若者支援を打ちだしていることもあり、また民進党でも国民党でもない斬新さから多くの若者が支援しているという。
 なぜ、これほど政治意識が高いのか。日本とは国情が違うと言ってしまえばそれまでだが、親中派、反中派、どちらが政権を握るかによって、台湾の未来が大きく左右されるからだろう。それだけではない。その路線が、台湾に住む一人一人の人生に大きく影響を及ぼすからだ。端的に言って、政治と生活が直結しているからと言えるだろう。そのことを台湾の人々の多くは、実感しているのだ。
 もう少し、深掘りしよう。どうして政治と生活が直結していると実感できるのか。それは、政権交代が起こっているからである。今回の民進党の頼氏の勝利により、初めて3期連続同一党の政権が実現したが、逆に言えば、今まで頻繁に政権交代が起こっていたのである。政権が変われば、生活が変わる、人生が変わることを台湾の人々は実感しているのである。
 
 日本はどうだろう。投票率は低いし、若者の政治意識は低い。投票率が高いのは高齢者、そして低投票率だと組織票、いわゆる岩盤支持者によって政治が決まっていく。そして、戦後自民党の政権が続き、政権交代もほとんど起きていない。民主党の政権が一時成立したが、野党政権が如何に統治能力に乏しいのかを露呈した結果に終わった。今や自民党単独では政権を維持できず、公明党との連立政権である。政権交代の可能性は、静かに進んでいるのであるが、野党の多党化によって政権を担える野党が存在しないことが、現政権の維持につながっている。だから、投票に行っても、何も変わらないのだ。政治と生活が連動していない。
 実は、連動していないことは無い。賃金の問題、少子高齢化の問題、人口減少の問題、国土強靭化の問題、中ロ北を想定した国防の問題などなど、すべて政治と連動しているのだ。一つ例を挙げよう。1月13日の土曜日の「正義のミカタ」で高橋洋一氏が発言していたことだ。政府は「来年度の予備費で復興に向けた予算1兆円を組む」と決めた。単純に聞くと、「オ―ッ!1兆円か、素晴らしいじゃないか」と思ってしまう。だが、高橋氏によれば、こんなやり方はあり得ないというのだ。考えてみればその通りだ。一刻も早く復興に向けた動きを進めなければならないのに、まだ来年度予算の審議もスタートしていない。3月末に成立したとしても、執行は新年度4月からだ。そんな悠長なことで良いのかとなる。高橋氏によれば、阪神淡路大震災の時は、震災1カ月後には、補正予算を編成したというのである。この政府の方針をどこのマスコミも批判しないのはおかしいと彼は言うのである。まさに、政治と生活が直結している事柄ではないか。本来ならば、岸田政権、財務省への猛烈な批判が被災地や支援者から起こってもおかしくないのだ。

 それでは、日本国民の政治意識、とりわけ若者の政治意識を高めるためにどうすれば良いか。一番の効果は政権交代が起こることである。しかし、政権交代が起こるためには、政治意識が高くならなければならず、ニワトリが先か卵が先かという議論になる。やはり、突破口は教育だろう。長年、政治教育は学校現場でタブー視されてきた。宗教教育も同じだ。政治教育を果敢に取り組むことで突破口が開けるのではないかと思うが、こんなことを言うと政治にアレルギーを持つ教師はそっぽを向く。そこで、探究学習の深掘りを提案したい。SDGsや環境問題などを切り口に探究学習に取り組んだり、地域の課題を解決するための探究学習が盛んだ。この課題解決型学習を、ドンドン深掘りしていくと、「どんな政治が必要か」に必ず行きつくのだ。「深い探究学習」、真にリアルに課題を解決するための探究学習を実践していけば、必ずや政治教育に結びついていく。だが、ここでも教師の姿勢がネックになるだろう。このような視点で、探究学習を指導や深掘りのための質問を投げかける教師はどこにいるかという問題だ。一度、教師自身がリアルな探究学習をする必要があるのだが、どうだろう。自分の労働環境さえ改善するために声をあげることができない教師が多い中で、やはり日本の教師に期待するのは無理があるのだろうと思ってしまう。突破口はどこにあるのだろう?


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