大阪府「学びの多様化学校」設置へ

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 12月25日に開催された大阪府の総合教育会議において、令和8年度から「学びの多様化学校」を設置されることが決定した。公立高校で全国初の取り組みである。この背景には、大阪府の不登校が全国平均に比べて2倍近くに上るという実態があるようだ。府立高校では、生徒1000人に対しての不登校人数が40.8人、全国平均では22.9人なのである。これは明らかに異常といえる数値だろう。全国的にも不登校は増加傾向にあり、「学びの多様化学校」の必要性は、益々増加する傾向にあり、公立高校として初めて設置に踏み切った意義は大きいと思う。
 その一方で、不登校の水準が全国平均の2倍近くというのは、異常ではないか。この原因をどのように考えるかということも同時に重要である。25日の総合教育会議に提出された資料を読んでみた。中学生を対象とした「生徒自身が最初に学校へ行きづらいと感じ始めたきっかけ」は以下のようになっている。

様々な要因がほぼ同程度に挙げられており、不登校になるきっかけを決め打ちすることはできない。複合的要因といえる。これに対して教員の見方は次の結果である。

無気力・不安が60%近くに上る。ここに大阪府の不登校の多さのヒントがあるように思われる。生徒は、様々な要因で心の許容量がいっぱいになり、頭も心も体も動けなくなっているのである。だから、表面的には「無気力・不安」と見える。当たり前だろう。問題は、その背後にある要因を考えられているかということである。この生徒のデータと教員のデータを見る限り、教員は生徒の不登校に対してきちんとアセスメントできていないのではないかと思える。不登校の生徒で、活発で元気いっぱいで楽しく過ごしている生徒は、ほぼ皆無なのだから。高校の教員の見立てとなると少し違った様相を呈する。

生活の乱れ、あそび、非行という傾向がクローズアップされてくる。この数値をみると、私の頭には「グリ下」が浮かび上がる。中学時代は無気力であっても、自分の居場所を見つけるために、学校や家庭以外に探し求めるのである。学校が彼らの居場所になっていない。学校でなくても「グリ下」にいくまでになんらかの「居場所」は無かったのだろうかと思う。今後設置される「学びの多様化学校」が彼らの居場所になることを願う。

 今、通信制に勤め、いろいろな学校から転入希望者が訪れてくる。時々、話ができそうな子に「前はどこの学校?」と聞く。「なんでここに来ることになったの?」とフランクに聞くと、ある府立高校の名をあげて、「あの学校、おかしい。教師がおかしい」と吐き捨てるように言う場合がある。生徒の言うことを全て真に受けないことは当然だが、その学校からは複数名の生徒が転入してくることを考えると、「どうなっているのだろう?」と疑問を持ってしまうのも仕方ないのではないだろうか。


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