TOKKATSU!


 12月6日に「クローズアップ現代+」で面白い放送があった。日本の特別活動、いわゆる特活についてのレポートである。日本では、新型コロナウイルスや教員の働き方改革の問題から、特別活動、主に学校行事について縮小傾向にあるという。その一方、エジプトでは日本式教育として、この特別活動が「TOKKATSU」として、積極的に導入されているという報告であった。

 なぜエジプトが日本式教育を導入したのか?2011年、「アラブの春」でムバラク政権が倒れ、エジプト国民は自由を手に入れた。ところが、エジプト国民は、この自由を使いこなせなかった。国内は混乱し、軍部のクーデーターが起こり、現在のシシ大統領へと繋がっていく。シシ大統領は、この混乱を「エジプト国民は、協力したり節度を守ったり、礼を重んじることに欠けている」として、日本の教育を視察した。そのとき、日本の学校で行われている特別活動、具体には日々の清掃活動や終礼、学級会での児童・生徒の討論、運動会などを視察し、「これだ!」と思ったというのである。
 日本式教育が導入される前のエジプトの教育は、暗記一辺倒で苦痛なものであったようだ。ある少女の例が紹介されていた。小学5年生の女の子で、小1の弟がいる。以前は、暗記中心の授業に、ストレス満載の状況だったらしく、学校が苦痛で仕方なかった。そして、家では何もしない子になってしまっていた。ところが、学校で「TOKKATSU」が始まり、集団の中での自分の役割、責任、自分たちで学校を良くしようという主体性が生まれ、今では学校に行くのが楽しいらしい。そして、この変化は家庭でも現れ、弟の面倒、家の手伝いを積極的にするようになったというのである。
 しかし、まだまだ課題はある。学級会の様子が報告されていたが、本来は子どもたちで運営されるべき会であるにも関わらず、先生が介入してしまうのである。先生が子どもに質問し、主導してしまう。よく日本でも見かける光景だが、「教える」ということが染みついてしまっている教師の性かもしれない。ただ、「TOKKATSU」担当の責任者は、「この日本式教育の導入で、社会を変え、国を変えるのだ」と理想は高い。頼もしい限りである。

 さて、日本。冒頭にも述べたように、特活の時間は縮小されてきている。教えることが染みついている教師は、子どもたちを管理することには長けているが、ファシリテートすることは不得手である。板橋区が積極的に特別活動を展開している例が紹介されていた。あるクラスで行われているイベントに出店するための学級会の様子である。目的は、「クラスの一致団結」だった。頑張っている実践だな・・・と見ていたが、ここでふと思った。これほど伝統のある特活を続けている日本で、家の手伝いをする子どもは増えているのだろうか?お互いに、尊敬し相手を認め合うことを求める特別活動で、なぜいじめは減らず、逆に増加しているのかということだ。エジプトの少女のように、責任感を持ち、主体的に活動しようとする子どもは、もっと育ってもいいのではないかと思う。何が問題なのだろう。これはあくまでも仮説としての話だが、日本の特活は、目的があいまいなのではないかと思う。「何のために、〇〇をするのか」ということだ。清掃活動についてエジプトの少女は、「私たちが勉強しやすい環境を維持するため」と明確に答えていた。日本でも同じ質問をしたら、同じように答えるだろうが、本気でそう思っているかどうかである。ここに違いがあるように思えてならない。「wellbeingをめざすagency」、大きく言えばこれが目標である。特活の一つ一つにこの大きな目標がどのように落とし込められているかを、教員は理解し、子どもが納得いくまで話し合うことも大事ではないかと思った。

本来の特活の姿が、いまや「TOKKATSU」として、エジプトで実践されているのではないかと思う。日本の教師は、エジプトを視察する必要があるのではないだろうか…


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