東京都教育委員会は6月17日、2回目となる「学校と家庭・地域とのより良好な関係づくりに係る有識者会議」を開催した。この会議で、「学校と家庭・地域とのより良好な関係づくりに向けた取り組みに係るアンケート調査」の結果が報告された。このアンケートは、学校に対するクレームなどの実体に関する調査で、アンケート項目を見てみると、とてもよくできている。全国で実施すべきではないかと思うのだ。
これほど大々的に、家庭・地域との関係について調査を行ったのは初めてではないか。今後の教員の働き方改革やモンスターペアレンツとの対処の方法、スクールロイヤーの導入について、客観的なデータとなる。文科省が率先して、全国の教職員に実施することで、保護者などのクレーム状況、教員の負担度を「見える化」しなければならないと思う。
https://www.kyoiku.metro.tokyo.lg.jp/documents/d/kyoiku/2025-06-17-104253-054
この調査結果について、公表されているデータを基に、違う側面で分析してみた。まずは、校種別回答者数であるが、下のグラフにあるように、高校と特別支援学校が極端に少ない。回答者数の割合については、東京都教育委員会が公表している令和6年度の学校基本調査を基に計算した。

高校は、保護者や地域と良好な関係を築いているので、回答者数が少ないという事は、決してないだろう。アンケート調査の段階で義務教育の学校と違う何かがあったのではないかと思う。
次に、年代別に「外部の方とのより良好な関係づくりに支障が生じるようなこと」を経験した実数と年代別の割合を示したのが次のグラフだ。20代から50代まで増加傾向にある。これは、どういうことを示すのだろうか。教師経験の年数が増えるにつれて、責任ある立場につくことが多く、学級のクレーム対応から学年の対応、学校の対応と、対応する範囲が拡大するためかもしれない。

次に、どのような言動・行動を受けたかを示すのが次のグラフだ。このデータ結果は、なかなか興味深い。

①「時間的拘束」は、年代が上がるほど減っていく。つまり、対応時間が減っていく傾向にある。クレームへの対応の教員の力量が向上するためだろうか
②一方、「暴言」は年代が上がるにつれ、増加傾向にある。これは何を意味するのだろうか。これは仮説だが、年代が上がる連れ、対応する教員も主任レベル、主幹教諭、教頭、校長となり、対応内容がよりシビアになっていくため、学校と保護者・地域との関係が、より深刻な状況になっているためではないかと思われる。
③同じ傾向が、「威嚇・脅迫」「リピート」にも言えるだろう。
④「過度な要求」は、30代で一つの山ができる。これは一体何か。疑問だ。
因みに支障を起こしている対象者は、どの年代も保護者が圧倒的に多いが、年代が上がるにつれ、「地域」が増えるのは、主幹教諭・教頭・校長など、学校を代表する対応が求められるからだろう。
最後に、支障が発生して、どのような影響が出たかが次のグラフである。

①20代は、「時間外労働は増えた」上に、「仕事への意欲が低下した」「心身に不調が生じた」が高い。これが20代の離職の一因になっていることが窺える。
②「時間外労働は増えた」は、年代が上がるほど増加している。やはり、事態の深刻化が、業務負担を増加させているのだろうか。
③「仕事への意欲が低下した」「心身に不調が生じた」は、年代が上がるほど低下していく。やはり経験値がモノを言うのかもしれない。
以上、公表されているデータを基に、少し違う視点で分析してみた。このような分析を全国の自治体で行うべきだろう。そうすることで、カスタマーハラスメント条例を超えた法的対応の必要が明確になるのではないかと思う。今後の展開を期待したい。
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