6月9日、NPO法人のSchool Liberty Networkが、文部科学省で記者会見を開き、「私学見える化プロジェクト」を始めると発表したという記事が、教育新聞に掲載されていた。記事には、「私立学校の子どもの権利侵害事例を調査したところ、共通する6つの問題点が浮かび上がってきたとし、私立学校に通う子どもも含めた子どもの権利擁護のための公的な第三者機関の設置などを提言。プロジェクトを通して、私立学校の抱える課題を明るみにし、公教育を担う機関として公共性を高めていくとしている。」と記載されている。とても興味が惹かれる内容なので、NPO 法人School Liberty Networkのサイトにアクセスし、「私立学校における児童生徒の権利擁護に関する実態調査報告書」を読んでみた。
教育新聞の記事のタイトルにもなっている「私学で起きる子どもの権利侵害 NPOが指摘する6つの共通点」が詳細に述べられている。6つの共通点とは、
・権利侵害を受けたときに相談できる窓口が明確ではない
・権利侵害事案に対して、実効力をもって介入できる公的機関が存在しない
・権利侵害を放置する学校に対するペナルティがない
・「私学の独自性」「教育方針」という名の下で権利侵害が容認されやすい傾向にある
・閉鎖的な環境になりやすく、権利侵害が発生しても情報が表に出にくい
・児童生徒や教員の身分が不安定である特性上、意見表明権が阻害されやすい
である。
びっくりするのは、補足資料にある「私立学校における権利侵害事案のおもな一例」である。このブログを読んだ人は、是非この報告書(下部にリンクあり)を読んでほしいので、この権利侵害の事案のタイトルを列挙してみたい。これを読めば、「なんじゃこりゃ!」と思うはずだ。
a. 理不尽校則や事前説明と異なる実態を問題提起した生徒会長が任期途中に解任された事例(高校・東京都)
b. 理事長が保護者に暴言を吐く、自身に反論した生徒を退学処分にするなどした事例(中学,高専等・東京都)
c. 男女交際禁止校則によって自主退学処分を受けた生徒が校則の無効性を訴えた裁判で生徒側が敗訴した事例(高校・東京都)
d. いじめ対応が不適切だったとして県で再調査委員会が設置された事例(中学校・奈良県)
e. いじめ被害にあった生徒を「問題行動のある生徒」と断定し適切な対応を行わなかった事例(中学校・東京都)
f. 顧問等によるいじめ・不適切指導を学校側が無視している事例(高校・新潟県)
g. 複数の教員による性加害に学校が適切な対応をしなかった事例(高校・東京都)
h. .校内で発生したいじめ自殺事案に関する第三者委員会報告書を学校側が拒否した事例(高校・長崎県)
i. 加害校主体による背景調査の限界と私学における制度的課題を含む指導死の事例(中学校・東京都)
報告書のまとめには、次のように記載されている。
「私立学校無償化の議論が進むなかで、私立学校のガバナンス、公共性がより一層問われており、私たちの税金が投入される学校で、権利侵害が起きた際に公的機関が実効力をもって対応できるような法制度を今だからこそ行うべきである。」
全くその通りだ。私立高校の無償化により、多額の税金が私立高校に投入されることになる。その私立高校が、健全な教育を行っているのかどうかが問題だ。健全な教育を行っていない、不祥事が相次ぐ、退学者が多いなどの事象があれば、果たして健全と言えるだろうか。そんな私立高校に税金を投入することを是としてよいのだろうか。
私立高校の無償化の制度設計で合意をしたという自民党・公明党・日本維新の会の国会議員は、この報告書をきちんと読むべきだろう。
私は、School Liberty Networkを応援したい!
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