21世紀出生児縦断調査ー自尊感情①

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 お約束通り、標記の調査について政府が提供するデータを入手し(と言っても誰でもcvsデータを入手できるサイトがあるのだが)、データ分析を開始した。この調査は、2001年に生まれた子どもと親に対して、毎年調査を行っているもので、第15回調査までは厚労省の管轄で行われており、第16回調査、2017年度の調査からは文科省が管轄している。調査の目的は、「子供や若者を取り巻く環境が,その後の進路選択等に与える影響を明らかにし,教育及び就業に関する国の諸施策の企画立案,実施等のための基礎資料を得ることを目的とする。」としており、厚労省の時は「少子化対策等の施策の企画立案、実施等のための基礎資料を得ることを目的としている。」としていた。継続的に調査が行われているので、統一したアンケート項目もあるが、年ごとに違うアンケート項目があったり、同じ趣旨と思われる調査でもアンケート項目が微妙に違っているところもある。これで調査の目的が完遂できるのかと疑問に思うところであるが、興味があったのでやってみた。今回分析したのは、「自尊感情」である。

 自尊感情のアンケートにも項目がいろいろあり、今回は「自分に対する自信について」「色々な良い素質を持っている」という問いである。この問いに対して、回答は6択、「とてもあてはまる」「ややあてはまる」「どちらともいえない」「あまりあてはまらない」「まったくあてはまらない」「不詳」である。これを、肯定感、否定感、どちらともいえない+不詳の3グループに分けて分析した。全体に関する結果が、次のグラフである。データは文科省の2017年以降のデータを使用している。

グラフからも明らかなように、肯定感とどちらともいえない+不詳が40%で推移し、否定感が若干増減があるが、3グループともほとんど変化が無いと言って良いだろう。日本の若者の自尊感情がOECDの中でも低いことは言われているが、このデータからも決して高くないことがわかる。
 次に、もう少し深く分析したいと思い、大都市、その他の都市、郡部でデータを切ってみた。それが次のグラフである。

このデータには、少し驚かされた。
①肯定感は、「その他の都市」がずば抜けて高く、順に大都市⇒群部と下がっていく。否定感も「その他の都市」が高く、順に大都市⇒郡部と下がっていく。つまり、「その他の都市」は、肯定感・否定感ともに高く、「どちらともいえない+不詳」と答えた人が、極端に低い。
②郡部の人は、その逆である。肯定感・否定感ともに低く、「どちらともいえない+不詳」が極端に高い。
③大都市の人は、その中間に位置するという状況である。

 さて、この要因は何だろう?大都市⇒その他の都市⇒郡部と人口密度が違う。人口密度が起因するなら、データもこの順に並ぶだろう。どうも人口密度は、直接関係が無いように思われる。とにかく、「その他の都市」が、肯定感も否定感も高いわけである。ということは、自分への理解が一番進んでいるということだ。社会インフラも整備され人口密度も高いのが大都市だが、それが自尊感情に大きく作用しない。何が作用しているのかわからないが、「その他の都市」の人間関係や環境が自己理解を進めることになっていると言える。逆に、郡部は自己理解が進みにくい人間関係や環境にあるということは、はっきりしている。何が要因なのか。もう少し突っ込んで分析してみたいが、これ以上はわからない。探求学習の「問い」としては面白いのではないか。
 現在、22歳(調査当時は21歳)の若者が対象の調査である。ネットを駆使する世代であるには違いないにも関わらず、これほど環境に左右される結果となった。つまり、ネット上の環境よりもよりリアルな環境が、自己理解を促進すると言えるだろう。

面白いので、もう少し分析してみたい。


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