高等学校教育の振興に関する懇談会


 10月28日の教育新聞に「通信制高校巡り『厳格化を』『同時に全日制改革必要』 文科省懇談会」というタイトルで記事が掲載された。読んでみると、新たに設置された「高等学校教育の振興に関する懇談会」で、高校教育を巡るさまざまな課題の検討に関する内容である。
 この検討会のアジェンダは、
▽高校教育の質の確保に向けた高校教育の充実
▽広域通信制高校での教育の質確保や、管理運営の適正化に向けた課題の整理
▽中高の円滑な接続に資する高校入学者選抜の在り方
らしい。この第一回の会議で、広域通信制について議論が交わされている。詳しくは、記事(下部にリンク先)を読んでもらえばわかるが、要は次の2点である。

一つは、広域通信制の中には、教育の質が担保されていなかったり、地域のルールに反する受験を設定しているところがある。こういう広域通信制には、補助金を減額したりする厳格さも必要ではないか。
もう一つは、通信制に来る生徒は、全日制にいられなくなって来る生徒が多い。全日制でこうした生徒を受け止める学校改革ができるかどうかだ。
という意見である。

確かに、ルール違反をするような広域通信制に対しては、厳格に対応する必要がある。そのことに異存はない。ただ、全日制私立高校はどうなのだと言いたい。今夏の広陵高校問題をはじめ、少なくない私立高校で体罰・いじめなどの重篤な問題事象が発生している。このような問題事象が発生している全日制私立高校の教育はどうするのだと言いたい。広域通信制に厳格な対応を迫るのであれば、同様に教育の質が担保されていない全日制私立高校にも厳格に対応する必要がある。
 特に、高校無償化で私立高校に税金が投入されることになり、このことにより生徒が集まりにくくなっている私立高校の延命化が図られている。国民の利益にならない教育を行っている全日制私立高校に税金を投入することの是非も議論すべきだろう。

 二つ目の意見である。確かに「適格主義」を採っている全日制高校の問題はある。この点についての改革も必要だ。全日制高校から通信制高校に転学してくる生徒が多数いるという事を考えれば、全日制高校の改革も重要な一つだろう。だが、問題はもっと根深い。今、通信制には中学校卒業時に通信制を選択する生徒が増えているのだ。コロナ禍からこの傾向はさらに顕著になっている。小学校・中学校の時に不登校を経験した生徒の学力は相当低いケースが多い。学校に行くことができていない時期の学習が、そっくりそのまま抜けているのだ。たとえ、不登校になって学校に行っていなくても進級だけはできる日本の制度。十分な学習を修得していなくても進級できる日本の制度。こういう制度に手を加えないで、全日制高校の改革を主張するのも、問題の解決には至らない。

この懇談会でどんな議論が展開されているのか、注目していきたい。

教育新聞記事
https://www.kyobun.co.jp/article/2025102805


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