高校無償化ー週刊新潮の記事


 2月27日発売の週刊新潮3月6日号に、「私立無償化で始まる教育崩壊」という記事が掲載されていたので、早速購入して読んでみた。色々なことが書かれてあったが、記者はおそらく教育の専門家ではないのだろう。議員や専門家、公私立高校の関係者などの取材内容が記載されているだけのように思えた。ここで少し書かれている論点を整理してみたい。
論点1:今回の無償化の対象になるのは高所得者で、自費で私立高校に通わせる経済的余裕がある。教育の機会の拡大に役立つとは思えない。
論点2:私立高校の無償化によって、経営がうまく行っていなかった私立高校の延命化につながる。
論点3:大阪府の公立高校の惨状が示すように、公立高校の地盤沈下が進む。
論点4:義務教育段階の私立の小中学校は有償であるのに、義務教育ではない高校で無償化になるのはおかしい
論点5:5500億円ものお金を使うのなら、小中学校も含め公立学校に投入し、私立高校との格差を是正すべき
というものである。

 このことから考えると、高校無償化についての施策の「そもそも論」と、無償化するならするでどのように運用するのかという「運用論」、そしてより本質的な議論として高校教育の質をどのように高めるのかという「高校教育の質向上論」だろうと思う。

 今回の国会での議論や自公維三党の議論を見てみても、無償化の金額の話はしていてもこの3つの「論」については、全くと言っていい程議論されなかったと思う。橋下氏がどこかの番組で前原氏に迫っていたように、「高所得者まで無償化する必要があるのか」「そんなことをするなら、低所得者にもっと手厚くする方が良いのではないか」というのは、教育政策として正しい。
 さらに、全ての私立高校が無条件に無償化されることで、果たして高校教育の質が向上するのかという問題も議論されていない。不祥事やいじめ、不登校、中退が多い私立高校まで延命させる必要はない。このような議論がまるでなされないままでの高校無償化決定は、「将来の遺恨を残す」(荻生田議員)という指摘も、決して的を外していない。

 あるyoutubeの番組で教育経済学者の慶応大学の中室氏と何かと有名な教育評論家工藤勇一氏が対談をしていた。工藤氏が面白いことを言っていた。「教育業界は新陳代謝が十分ではない」と。つまり、世の中は劇的に変化しているのに、旧態然とした教育を行っている学校が依然として多い。そして新規参入もなかなか難しいというのだ。ということは、今回の高校無償化によって、益々私立高校の延命化が進むので、新陳代謝は進まないだろう。

 そこで、この新陳代謝を進める提案である。公立高校と私立高校の入試を同日にすることだ。このようにすることで、公立と私立、公立と公立、私立と私立、あらゆる高校の生徒獲得競争が同じ土俵で行われる。質の高い教育を行っている学校が生き残るのだ。これから少子化は益々進む。今日の新聞は2024年度の出生が72万人と出ていた。9年連続減少しているのだ。現在の高校入学段階の生徒は、100万人である。そうすると、今後15年間の間に30万人近く減少する。高校無償化によって、この15年間に公立高校だけが消滅していくというような教育政策で良いのか。

今後、高校教育の質を如何に高めていくのか。その議論が求められる。


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