高校無償化の制度設計


 来年度から実施が予定されている高校無償化の実施に関して、自民党・公明党・日本維新の会の間で、制度設計の議論が進められている。9月10日には、自民党の教育・人材力強化調査会(会長・柴山昌彦元文科相)の会合が開催され、制度設計の方向性が示された。マスコミでは、外国籍の生徒については無償化の対象は定住が見込まれる生徒として、インターナショナルスクールなどはいったん制度から外すことや、広域通信制高校は対象外とする方向で検討を進めていることが報じられている。確かに一つの論点だろうが、果たしてそれだけで良いのだろうか。

 というのも、この間、広陵高校をはじめ、少なくない私立高校の部活動で不祥事が発生しているのだ。その中でも広陵高校の野球部の不祥事については、単に野球部の不祥事というよりは、高校自体のリスクマネジメントがなっていないと言えるだろう。2025年1月に発生した暴力事案を、いじめ重大事案と判断し、速やかに第三者委員会を設置していれば、今のような事態には至らなかった。事件の矮小化を図ろうとしたために、SNSでの事件の拡散を招き、甲子園辞退にまで至ったのである。このような不祥事の発生、学校経営のマネジメントが十分ではない高校に対して、税金を投入して良いのかという議論はあっても良いだろう。

 例えば、大学に対する私学助成は、日大や東京女子医大のように、深刻な不祥事が発生した大学には、私学助成が給付されていない。同じように、高校無償化についても、学校経営が正常でなかったり、深刻な不祥事が発生した私学法人には、無償化の税金を投入しないと判断するのが良いのではないか。その判断は、都道府県にある私学の管轄部署が行うのが良いと考える。

 とにかく、高校無償化によって公立高校から私立高校に入学者が流れる可能性が高い。すでに大阪府では、その傾向が顕著である。このようなことが全国で起こるだろう。私立高校の経営にとって、無償化の推進は、少子化の中で経営困難に陥っている中で、一筋の光である。しかし、私立高校の教育水準がどのようなものであるかも無償化対象の判断基準の一つにしなければならない。


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