高校無償化「質」高めるか


 4月9日の読売新聞に「高校無償化『質』高めるか」という題で、解説記事が掲載された。掲載されているのは、全国高校長協会長の内田氏(都立三田高校校長)、大阪府知事吉村氏、慶応大学赤林教授らの話である。
 内田氏は、自治体のハード面の協力が重要としながら、公立高校の魅力化のために、特色を打ち出す必要があるとともに、特色化の推進のために、学校裁量で使える予算の拡充を訴える。全くその通りだ。特に、私立高校の施設・設備と比して、どうしても公立高校が見劣りしてしまうことからも、自治体からのハード面の支援は、特に重要である。

 吉村知事は、私にとっても利害関係者だったので、ちょっと感情が入ってしまうことをご容赦願いたい。吉村氏が、「OECDの調査によると、日本は国内総生産に占める教育機関への公的支出の割合が加盟国で最低レベルとなっている。少子化が進む中で、もっと教育に投資すべきだ」と言っているが、どの口が言っているねん!と大阪弁で突っ込みたくなる。それなら、府立高校にもっと予算を使えよと言いたい。どれだけ、老朽化した校舎で授業が行われていると思っているのだ!と叫びたい。
 彼の本音は、「公立高校は用無し」というスタンスなのだ。それは以下の彼の言葉に現れている。
「もし生徒の多くが私立高を選ぶのであれば、都道府県側は、その理由や公立高の果たすべき役割は何なのかを真剣に考えなければならない。少子化が進む社会では、一律に公立高を維持することはできない。例えば、進学に力を入れる高校、問題を抱える子どもを対象にした高校といったような特色を生かして再編すればいい。」
という事は、多くの全日制普通科は、私立高校に委ねればよいというように読み取れる。果たして、それが公立高校の役割なのか。吉村知事も認めるように、高校はほぼ義務教育化している状態だ。そうであるならば、大多数の高校生の教育に責任を持つのは、私立高校ではなく学習指導要領に基づいて公教育を行う公立高校であろう。まるで、教育というものが分っていない。こんな公立高校潰しを公言する知事は、退場願いたいものだ。大阪府の行政を担う知事であるならば、これだけ公立高校が定員割れを起こしていることに、もっと責任を感じるべきだが、彼は一切責任を感じていない。大阪府の教育基本計画にも関わる責任者としては、あまりにも不適格だ。

 赤林教授の意見にはうなずくことが多い。この拙速な高校無償化に関して発生する様々な問題に言及している。あまり語られることが無く、私もなるほどと思ったのが、入試科目だ。私立高校の入試が、理社を除く3科目入試が多いという点である。そのことにより、学力低下を招くのではないかという指摘だ。その上で、
「多額の税金を投入する以上、私立高校も公立高校と同等の入試に見直すなど一定のルールを設け、競争条件を平準化することは不可欠だ」
「私立高に与えられている自由を制限されることを望まない高校は、授業料の無償化を受け入れなければよい。諸外国では、それが普通となっている」
というのは、全くその通りだ。教授が示すように、「私立高と公立高の自由と規制のバランス」について、抜本的な議論が必要である。つまり、私立高の公立高化、公立高の私立高化である。具体的には、
☆公立高校のヒト・モノ・カネに関する裁量権の拡大。
☆私立高校の公立高校並みの受験制度の制定
☆高校無償化を受けることができる私立高校の基準設定
  ・例えば、退学率の問題、不祥事の問題・体罰の有無などである
そして、何よりも重要なことは、公私の同日受験だろう。当然、第二希望の設定や複数回受験の設定が必要になる。

とにかく、この予算が成立したわけであるから、早急に高校無償化の問題点を整理し、無償化を進めるうえでの制度設計が求められるのだ。


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