高校授業料無償化の盲点


 11月17日、読売新聞の3面に大きく「高校授業料無償化」の話題が取り上げられていた。自民・公明・維新によって政策合意され、その具体化を、現在与党で行っている。この政策については、いろいろと議論されている。

 例えば、先行実施する東京都や大阪府では、公立高校の定員割れが発生し、大きな問題としてクローズアップされている。つまり、私立高校に生徒の希望が集まり、公立高校のニーズが減るのではないかという問題だ。大阪府では、橋下府政までは、公立:私立=7:3という割合で取り決められていたことを撤廃し、生徒獲得において自由競争が持ち込まれた。その結果、令和7年度入試では、私立高校の割合が4割を超えたというのである。令和8年度入試では、高校授業料の無償化で同様の現象が全国で発生するだろうと言われている。このようなことが推し進められていくと、高校教育を私立高校が担う割合が増えていくことになる。私立高校は、建学の理念に基づき学校経営されており、特色ある教育が行われているところもあるが、果たして高校教育を私立高校に担わせて良いのかという問題だ。

 この点について、自民党を中心に地方の専門高校(工業高校、農業高校等)に人が集まらないのではないか、地域の産業に影響を及ぼすのではないかという意見が出され、公立高校の魅力化に向けた発信が行われているが、何も専門教育だけの問題ではない。普通科を私立高校中心に担わせて大丈夫なのかという問題だ。

 と言うのも、私立高校の教育実態には様々な問題もあるのではないかということである。以前にも、「スポーツ強豪校での不祥事」でも書いたように、学校の経営を円滑にするために、3桁にも上る部員を集め、学校経営に資する私立高校は多くある。広島県の広陵高校野球部のいじめ・暴力事案の発生から、私立の強豪高校での様々な問題が明るみになっているのだ。果たして、10代という貴重な時間を若者の成長のために十分な教育が行われているのだろうかと疑わしい事案も目に付く。

 そこで、この高校無償化という政策の盲点だが、何でもかんでも全ての私立高校に税金をつぎ込んで良いのだろうかという点である。文科省の大学への私学助成についても、不祥事が発生したり、経営に問題があるような大学には、政府の私学助成が止められているではないか。同じように、私立高校に税金をつぎ込むにあたっても、その基準というものを明確にすべきではないかと思うのだ。この点については、議論されているようには思えない。是非、この点について議論をお願いしたいと思う。


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