香淑と香子


 「虎に翼」は、録画して毎日見ている。物語は、東京から新潟三条市移るようだ。寅子は、判事補から判事になり本格的に弁護士としての土台を育てることとなる。桂場の不器用だが、後輩である寅子を思う愛情だろう。家族の関係が、破綻寸前だった寅子。果たして一人娘、優未との関係は修復できるのかというのが、今後の見どころのように思う。
 ところで、朝鮮半島から弁護士になるために留学していた崔 香淑のことだ。ご存じのように、汐見と恋に落ち、再び日本に舞い戻ってきた。しかし、彼女は、香淑を捨て、香子として生きていた。香淑としての自分を知っている誰にも会わず、あれだけ仲が良かった同窓の仲間たちを避け、香子として生きている。
 戦争が終わり、新憲法が発布され、自由と平等が担保された。轟とよねが開いた事務所の壁には、憲法第14条「すべて国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。」が大きく書かれている。寅子やよねたちにとって、これほど待ち焦がれた条文は無いだろう。ドラマでは、このことがクローズアップされている。特に女性の地位の問題へのアプローチがクローズアップされている。ところが、香淑が本名を名乗ることができない日本社会の問題へのアプローチが弱い。私自身も、「香淑が、香子として生きていくのは、ある意味仕方ないか・・・」とすんなり受け入れてしまっていた部分がある。しかし、実は、これは大きな問題なのだ。今でもそうだが、在日韓国朝鮮人の人たちが、本名を何の抵抗も無く名乗れているかというと、そうではない現実がある。日本でも外国の人たちがたくさん働いていたり、若者の韓国文化へのシンパシーが強まったりして、本名を名乗ることへの抵抗は、昔ほど強くなくなったのではないかと勝手に思っているが、香淑が生きた戦後すぐの日本では、まだまだ在日韓国朝鮮人への差別と偏見は、凄まじかった。私の父も戦前に生まれ、終戦を10歳で迎えたが、ものすごい偏見を持っていた。平気で在日の人たちを嘲笑することを子どもの前でしていた。

 今後、このドラマの中で、香淑は、香子ではなく、香淑として生きていくことができるのだろうか。それができて、はじめて憲法第14条の意味が、見えてくるように思う。今後の展開に期待したい。


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