首相官邸の「核武装」発言


 大晦日の今日12月31日は、来年も大きく話題になるこの話題だ。首相官邸の安全保障担当の補佐官が、オフレコと断った状態で「日本は核を保有すべき」という個人的見解を語ったが、これがオフレコというルールを超えて、各メディアで報道された。この件を巡って、政党や評論家の間で、左右から議論が交わされている。左派の政党からは、この補佐官の更迭という事まで取り出されている。通常国会開催まで決着が着かなければ、国会で大きな議論になるだろう。高市首相も難しい決断を迫られることになる。

 私の考えは、こうだ。ここまで話題になっているのだから、この補佐官も堂々と顔出しで、なぜこのような発言をしたのか説明をすればよいと思うのだ。核を持つかどうかというよりも、日本の安全保障をどのように行うかについては、真剣な議論が必要な時期に来ていると思うからだ。一番ダメなことは、日本の安全保障についての議論をタブー視することである。

 まず、日本国民全員が確認すべきことは、日本は核保有国である中国・ロシア・北朝鮮を、日本海を挟んだ隣国に持つという厳然たる事実である。しかも、この3国とも、専制主義国家であり、西側諸国とは根本的な価値観を共有しない。日本は東ヨーロッパでロシアに接するバルト三国、北欧諸国、ポーランドと同じような状況にあるという事である。彼らの安全保障に関する危機感と比べて、日本での危機感、防衛に関する議論は、とてつもなくお花畑的である。

 他国への侵略がどのように起こるか。それはウクライナにロシアが侵略した事実を見れば明らかだ、圧倒的に軍事バランスが崩れたときに、武力行使が行われるという事である。ウクライナが核を放棄しなければ、今回のような事態にはならなかったというのは、国際政治力学の基本中の基本だ。今、日本と中国の軍事力を比較すれば、かの国は日本の5倍と言われている。空母打撃軍を3艦隊保有しているのである。日米安保条約はあるとはいえ、軍事バランスは崩れようとしているのだ。

 このような状況で日本の安全保障をどのように行うのか。今回の発言は、その議論に一石を投じるものだ。だから、最初に述べたように、堂々と発言すれば良いと思うし、高市首相もこの補佐官を罷免する必要はない。国民的議論を喚起しようと呼びかければよい。こういうと、軍拡をめざすのかと思われるかもしれないが、右であろうが、左であろうが、戦火を交えることを望んでいるわけではない。如何に平和を保つかという事で議論が分かれているのだ。

 昔、社会党が、護憲を訴え、非武装中立を唱えていたが、これほどお花畑の議論はないし、最もコストがかかる防衛論だ。アメリカとの軍事同盟である日米安保条約に関して、アメリカの軍事力増強の要望があったのかと取り上げていた共産党議員がいたが、共産党は、一体どうやって日本を防衛しようとしているのか、真剣に考えたことがあるのかと聞いてみたい。

 イギリスは、どのように安全保障を確保しているのか。それは原子力潜水艦に核ミサイルを搭載しているのだ。もし、イギリス本土に核ミサイルを発射しようものなら、どこにいるかわからない原潜から相手国に対して核ミサイルが発射されるのだ。このことにより、核の均衡、軍事力のバランスがもたらされている。

日本はどうするのか?核を持つのか持たないのか。持たないなら、どのように安全保障を保つのか。真剣に議論する時が来ている。


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