通信制高校の急増

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 私の職場には、学校経営アカデミーという冊子が届く。前にも書いたが、誰も読まないので私が読んでいる。時々、面白いことが書いてあるし、何よりも、データというエビデンスが示されているのが良い。2025年3月号には、特集で「高等教育政策を解説する」という記事が掲載されていた。今回は、「通信制高校・大学が拓く未来(上)」である。記事を書いたのは、学校経営アカデミー首席研究員・大学マネジメント研究会の会長、本間氏だ。
 ご存じのように、通信制高校は急増している。 本間氏によると急増の原因は次の4点である。
第一は、2004年に高等学校通信教育課程の弾力化、大綱化が行われたこと
第二は、通信制高校は、決まった時期・時間に高校に通学する必要が無く、自分の生活時間に合わせて、自分のペースで学習することが可能なこと
第三に、不登校生徒が急増していること
第四に、通信制高校が、「対人関係困難」な生徒の受け皿になっていること
である。高校生のうち、通信制高校に通う生徒が、全体の9.1%、1割近くいるのだ。この間の急増を示したのが、次のグラフである。

 少子化で高校生の数が減少しているにもかかわらず、通信制高校に通う生徒数は増加しており、その多くは乱立する私立の通信制高校が受け入れているのだ。通信制高校は、「高卒資格取得のセイフティネット」と言われてきた。確かに、そのほとんどが何らかの事情で全日制高校から転入してくる生徒を受け入れてきた。不登校生徒が増える中で、中卒から通信制高校に進学する生徒も増えている。そこで、考えることだが、もう通信制高校は「セイフティネット」とばかり言っていられないのではないか。おそらく近いうちに、高校生の1割以上が通信制高校に在籍し、そして卒業していくことになるだろう。少なくない数の高校生が高卒という資格を通信制で取得するのだ。何が言いたいかと言うと、高卒という資格に値する学力の育成と、卒業の進路を確立するようにキャリア形成が十分に行われているのかという問題があるということだ。

 例えば、学力の問題。通信制高校は、スクーリングとレポートとテストによって単位認定が行われる。私は数学を教えているが、半期に10回~12回程度の授業を1つの科目で行う。生徒はそのうち2回だけ出席すればスクーリングの条件は満たす。レポートは、半期の前半3回、後半3回の6枚のレポート提出で60点以上の点数を取れば合格だ。通信制高校に来てびっくりしたことだが、数学の課題とは、「問題を解くこと」にあると思っていたが、レポートに穴埋め問題があるのだ。教科書を見て、語句を当てはめるのである。長い教師生活の中で初めて経験した。超困難校と言われた学校でさえ無かったことだ。こんな状況で、必須となっている数学Ⅰの単位を認めて良いのかという疑問の中で日々過ごしている。

 そして卒業後の進路だ。やはり未定の卒業生が少なからずいる。この指導は中々難しい。進路指導の計画はあるが、参加は自由なのだ。だから、キャリア意識の形成については、生徒個人の成長に委ねられるケースが多い。そして、私はかなり重要な要素だと思っているのだが、通信制高校の生徒は、他の生徒から刺激を受ける機会は極端に少ないという事だ。全日制では、クラスというものがあり、生徒同士互いに刺激を受ける。キャリア意識の形成について、互いに刺激を受けるのだ。ところが、通信制の生徒の場合、個々の生徒は孤立しているケースが多い。なかなか生徒同士で刺激を受ける機会も少ないのだ。

通信制高校の社会的役割はますます増している。その社会的役割に見合った教育を通信制高校が行えているのか、真摯に検討する時期に来ているのではないだろうか。


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