通信制に勤めて思うこと・・・


 今年4月から新たな職場、通信制の高校に勤めている。3か月が経とうとしている。今まで経験してきた全日制と違い、いろいろなところで戸惑うことが多い3か月だった。まずは、システムが違うので、大きなところから小さなところまで仕事を覚えるのが大変な日々だった。ここで、少し通信制に通って思うところをまとめてみたい。これから書くことは、特に全日制に勤める先生に読んでほしいと思う。
 まず、通信制のシステムについてザクっと紹介しよう。
 (1)74単位習得すれば卒業できる
 (2)スクーリングは、毎日来ることはない。(私の所属する学校は月・水・金に設定されている)
 (3)習得単位数や習得した教科・科目が違うので、それそれがそれぞれの必要な科目、勉強したい科目を申請し、授業を受ける
 (4)申請した科目は毎回出る必要はない。私が担当している講義系の科目は2回の出席、演習系の科目は8回の出席が条件である。
 (5)単位は、授業出席、レポートの提出、単位認定テストで判断され、授業とレポートをクリアしなければ、テストは受験できない。
 (6)特別活動は、合計30時間参加する必要があり、そのうち1時間は進路関係の特活を含まなけれならない。
大体、こんな感じである。授業には、誰が何人出席しているのか、教室に行くまでわからない。教材プリントを何枚用意すればよいか、予想しなければいけないが、大きく外れてプリントが大量に余ったり、足りずに慌てて印刷したりすることも度々だ。
 生徒たちの多くは、全日制の学校を何らかの理由で続けられなかった生徒が通学している。中学校からストレートで通信制に進学する生徒もいるが、ほとんどは、全日制からの転学である。転学の理由も様々で、集団不適応などと教育行政用語で分類することもできるだろうが、多くの生徒に共通しているのは、コミュニケーション力が圧倒的に足らないということである。全日制から通信制に移ってきた生徒にとって、通信制高校というのは、高卒資格取得の「最後の砦」と言えるだろう。そういう意味で言うと、社会的にも教育的にもその存在意義はとても大きい。
 ところが、である。通信制高校を卒業するのは、そう簡単ではない。生徒たちは、毎日、毎時間授業に出なくてよい、クラスもないし、煩わしい人間関係に悩まなくてよい、と思って通信制にやってくる。端的に言うと「全日制よりもラク!」と思っている生徒が、圧倒的に多い。現実は違う。学校に来なければ、電話してくれるのは全日制で、通信制は余程出席しない日が続いていないと電話連絡をしない。なぜなら、いつ授業に出るかは本人次第なのだから。5月に入っても出席がない生徒に電話した時に、こんな風に生徒に言われた。
「ちゃんと自分で考えていますよ。こんな風に電話しないでほしい。そのために通信制に来たのだから」
「ごめん、ごめん。そうだよね。これからは余程のことがない限り電話は控えるわ」
というような会話である。こんな生徒ばかりなら全然問題がないが、いくら待っても出席せず、既定の授業回数に届かない生徒も少なからずいるし、レポート提出期限を過ぎても提出しない生徒もいる。ただし、再提出、再々提出期間が設けられているので、レポート点数は下がってもまだ機会があるところは、さすが通信制である。ところが、この親切な機会さえ十分に活用できない生徒もいるのである。様々な条件をクリアしようとしているのか、していないのか、結果を見てみないとわからない。というのも、どのように単位を取得していくかは、生徒本人次第ということである。全日制の学校も義務教育ではないので、進級したり卒業したりするは、本人次第と言えばいえるが、圧倒的に通信制の方が自己管理が問われる。
 全日制の先生方に言いたい。通信制は、圧倒的に全日制よりも自己管理の力が問われるのである。しかし、自己管理能力に乏しい生徒が通学するのも通信制なのである。全日制をドロップアウトした生徒に「通信制で頑張ったら?」と安易に声をかける前に、「もっと自己管理する力つけないと通信制も難しいぞ」とアドバイスしてあげてほしい。そんな風に思うようになった3か月である。


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