読売新聞「変容する米国」

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 アメリカの分断が相当進んでいるようだ。11月1日の読売新聞から「変容する米国」の特集記事がスタートした。どうも民主党急進派と共和党保守派のあいだで、意見の対立が進んでいる。記事で掲載されていたのは、黒人奴隷に関する問題である。一つは、建国の父であるトーマス・ジェファーソンに関する評価である。日本の世界史の授業でも習う超有名人であり、「アメリカ独立宣言」を起草した人である。近代民主主義を象徴する一人である。ところが、彼が多くの黒人奴隷を使っていたこと、黒人女性に子どもを産ませたことがクローズアップされ、ジェファーソンの名を冠した学校の名前変更がウィスコンシン州のマディソンで起こっているのである。また、南北戦争の時の南軍の兵士像を巡る議論、黒人奴隷の子孫に対する補償問題など、意見の対立が先鋭化しているらしい。
 この対立は、イデオロギーの対立であるために、中々収束しないだろう。しかし、意見の対立を先鋭化させても何ら意味がない。この意見の対立をどのように止揚するかがポイントだ。ジェファーソンの例でも、歴史を前に進めた部分と歴史的制約を受けた部分があることをきちんと認識しなければならない。その評価を行うことがいまを生きる私たちに課せられた任務だろう。

「アメリカ独立宣言を起草し、民主主義を提唱したジェファーソンでさえ、黒人奴隷を使用していた。アメリカの黒人差別の歴史をしっかりと認識し、ジェファーソンが提唱した民主主義がアメリカでどのように発展してきたのか、それを私たちは学び継承しなければならない」

これが議論の収束先ではないか。〇か✖かの話ではない。南軍兵士像を称賛として位置づけるのかどうか、ここが議論の分かれ目であるが、黒人奴隷制度を指示した南軍に歴史的価値はほぼない。この点は、共和党保守派も自らの国の歴史をきちんと認識すべきである。だからといって、黒人奴隷の子孫に賠償金を払うというのは、行き過ぎだ。もっと、黒人差別を解消していく方法はある。
 アメリカ国民は、もっと冷静になって、意見対立を止揚する努力をすべきではないか。


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