読売新聞「ヒロシマサミット」アンケート結果


 7月31日の読売新聞に被爆者の方100人を対象とした「ヒロシマサミット」に関するアンケート調査が発表された。これから8月の6日・9日・15日と平和を考える時期を迎えるにあたっての企画だと思う。このヒロシマサミットが開催された当初は、核禁止の平和運動に関わる人たちから「失敗だ」「落胆した」「ヒロシマの地を貸しただけ」などという極めて否定的な論評が出された。それに対して、私は「そうではない」という意見をこのブログに書いた。今回のアンケート調査で被爆者の6割の方が、「G7首脳の平和資料館の視察と被爆者との対話」を評価できると回答した。何か、心中で「ホッ」とした安堵感を覚えた。
 ただ、「G7サミットで世界は核兵器廃絶に近づいたと思うか」という問いには、74人が「NO」を、「G7サミットの『首脳声明』をどのように感じるか」という問いにも、62人が「評価できない」と答えている。ロシアのプーチン大統領がウクライナに侵攻し、核の使用をちらつかせている中で、核廃絶に近づいたとは到底思えない。逆に核使用の危険性が、キューバ危機以上に高まっていると言えるだろう。また、「核抑止」を基調とするG7声明にも、被爆者の立場からは受け入れがたいのは十分に理解できる。しかし、実際に世界では対立する大国が核を保有し、互いに核を一発でも撃てば、世界の終わりが始まるというガラス細工のような均衡の上に、世界の現状があるというのも厳然たる事実である。本当に核兵器廃絶をするための道筋は何なのか。今、世界各国の首脳でさえも、そして国連でさえも見いだせないのではないかと思う。

 「NATOの二重決定」はご存じだろうか?旧ソ連が、SS20という中距離核ミサイルを配備したことにより、NATOと旧ソ連の間で急速に緊張関係が高まった。NATOはSS20に対抗して、パーシングミサイルを配備し対抗した。この時期に西ドイツに「パーシングミサイルを配備する」ということと「中距離核ミサイルの削減交渉を呼びかける」という二つの逆方向のことがNATOで決定されたのである。この決定については、未だにその評価は分かれるのだが、この後、レーガン大統領とゴルバチョフ書記長の間で、INF条約が締結し冷戦の終結の象徴として中距離核ミサイルが全廃されたのである。この素人には非常にわかりにくい動きが、核が現実的に配備されている世界には必要になるということではないだろうか。
 今、プーチンは戦術核の使用をちらつかせている。日本でも核を使用するのかしないのか、様々な議論があるが、前に紹介した「ウクライナ戦争の嘘」では、クリミア半島がどうなるかによるだろうと二人のインテリジェンスのプロが予想している。つい最近、ロシアの専門家からも同じようなメッセージが出された。「クリミアを失うようなことになれば、プーチン大統領は確実に戦術核を使う」と。ウクライナ戦争の終結は、このクリミアの取り扱いが大きな焦点になりそうだ。

 さて、核廃絶平和運動の意義である。中距離核ミサイルが欧州に配備されたころ、大規模な平和運動が欧州に巻き起こった。何十万人、何百万人という人が、核廃絶を求めて立ち上がった。日本でも同様の集会が、東京、大阪、広島と開催され、何十万という人が参加したことを記憶している。私が大学生の頃である。今、プーチン大統領が戦術核の使用を言及している中で、もう一度大規模な平和のうねりは必要だろう。そして、この西側のうねりが、プーチンの足元であるモスクワ、ペテルブルグでも大きなうねりとなることが必要である。ロシアの人々の心に届くまで、世界的な規模での平和運動が盛り上がらなければ、プーチンに核の使用を思い留まらせることはできないと思う。果たして、日本も含め、西側諸国にこのうねりを創る動きがあるか。そして、ロシア人の心に届くことができるか。キューバ危機以上の危機に瀕するこの局面で、我々は何ができるか、真剣に考え、行動を起こさなければならない。


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