読売新聞 「言わせて 聞かせて」

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 3月17日の読売新聞の「言わせて 聞かせて」に興味深い記事が掲載されていた。大阪府の取組の話題である。大阪府立むらの支援学校に通う生徒が、共生推進教室に通って、普通科の生徒と一緒に野球部で頑張っているという記事だ。懐かしいな!と思った。というのも、私は、知的障がい生徒自立支援コースのある西成高校に勤務し、そして教頭として共生推進教室のある枚岡樟風高校に勤めていたからだ。
 大阪府では、「共に学び、共に育つ」をスローガンに、知的障がいがある生徒とそうでない生徒が共に学ぶ取り組みが行われている。私が両システムに関わったときは、まだ草創期で手探りで様々な事を議論していた。西成高校では、同コースが設置される以前から障がいのある生徒を受け入れる実践が行われてきたので、同コースの実践も府内で先進的に行われてきた。私が主任を務めていた学年でも、同コースの生徒の就職保障のために、一緒に企業訪問をしたことを覚えている。一方、枚岡樟風高校の場合、府内の高校再編校で総合学科に移行した学校で、大阪府教育庁から共生推進教室の設置を命じられたという経緯もあり、中々校内で共生推進教室が根付いていないという現状があった。私の仕事は、共生推進教室付きの先生方と共に、この制度を如何に円滑に行うかというものであった。いろいろな苦労もあったが、共生推進教室付きの先生方の努力の甲斐があり、今は円滑に運営されていると聞いている。

 こんな話を聞いた。枚岡樟風高校の共生推進教室に参加している生徒も、同校の部活動に参加している。ラグビー部に所属している生徒もいた。ご存じのようにラグビー人口はそれほど多くなく、近隣の学校との合同チームを結成することが多い。枚岡樟風高校も近隣の数校と合同チームを結成していた。その中に、私が校長を務めていた布施高校にも入っていた。一緒に練習するうちに、段々障壁も無くなり、打ち解けてきたらしい。3年生になって、進路を考える時期になったとき、突然共生推進教室の生徒が、「大学に行く!」と言い出した。なぜか?布施高校の多くの生徒は、大学進学を希望している。そんな話題を練習の前後で耳にし、刺激を受けたみたいだ。そんな理由で、「自分も大学に行く!」と言ったのだ。なんと微笑ましいことか。これが、「共に学び、共に育つ」という理念の現れではないかと思う。

 ところで、記事の内容だ。今回担当されたのは、北島美穂記者だが、文中に「共に学び、共に育つ」という言葉が、一度も出てこない。これは、とても残念である。大阪府の先進的な取組だけに、全国版に載せるなら、ここに焦点を当ててほしかったと思う。
 


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