群馬県のO子さん、大丈夫ですか?


 9月1日の読売新聞の人生案内に、こんな相談が掲載されていた。群馬県のO子さん、25歳である。現在フリーターである。社会人になって5回転職をした。辞める理由は、福利厚生が不十分だったり、給料が割り合わなかったらしい。現在は、アルバイトで生計を立てていて、給料も良いし、自由な時間もある。だから、充実した生活をしていると感じている。相談内容は、将来を考えると、正社員をめざすべきだと思うが、果たして就活はうまくいくだろうか?今の生活を手放したくない気持ちもあるということである。

 この相談を目にして、「O子さん、大丈夫か?」と他人事ながら心配になったし、こういうようにしか認識できていないO子さんは、どんなキャリア教育を受けてきたのだろうと思う。2000年頃にフリーターや派遣社員というのが一時期流行った。正社員にならずに、同じ職場にとどまらず仕事を続けていくのである。高卒後すぐに働く高校生も、正社員ではなく、「フリーターで良い」という生徒も出始めた。実際、正社員よりもアルバイトの方が実入りが良いということもあるのだ。目先の金に目を奪われがちな高校生は、ほっておくとフリーターに流れて行ってしまう。そこで、我々教師は、正社員はどれほど守られているか、つまり雇用保険や労災保険、健康保険、厚生年金保険などが正社員では手当てされていること、生涯取得年金では、比べものにならないほどの格差が、正規と非正規の間であることを教えてきた。そして、非正規が如何に不安定な仕事であるかを教えてきたのだ。だから、目の前のアルバイトがバラ色のように見えても、正社員をめざすべきであると、口を酸っぱくして言ってきたのである。

 ところが、このO子さんは、アルバイトか正社員かで悩み、今の金と時間に満足しているのである。このO子さんは、どんなことを学んできたのだろうと思う。人生を歩む上での「イロハのイ」ではないかと思う。それをわざわざ新聞の人生相談に投稿して相談しているのだ。それも全国版に掲載されることを知った上でである。ということは、自分が今悩んでいることは、恥ずかしいことではないと認識しているのだろう。おいおい、大丈夫か、日本のキャリア教育は!と思う。回答者の山田先生(大学教授)は、的確に返答されていたが、大学教授がわざわざ言うような内容ではない。高校でしっかりと学ぶことである。

 私の勤める通信制高校でも、正社員に向けて、応募前職場見学に行っている生徒は少なくない。しかし、残念なことに私のクラスではないのだ。私のクラスの3年生の半分くらいは就職希望なのだが、この夏には何の相談も寄越してこなかった(進学希望の生徒は、熱心に相談に来る)。大丈夫か?と思う。ある生徒などは、卒業をまじかに控えて、「ええ・・・!働くのイヤ!20歳までこのままでいたい」と平気で言うのである。精神的な成長を待つしかないと思いつつ、日本では、18歳というのは一つの区切りの年齢であることを伝えた。

 こんなことを考えていると、日曜日の朝から、暗い気持ちになってしまった。もうすぐ、就職試験も始まるのだ。


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