署名活動に意味があるのか?

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 奈良教育大学付属小学校の出向人事計画に関して、その計画に反対する署名活動が行われている。確かに、大量の人事異動を短い期間で行うことによって、校内運営に支障が出るということは理解できる。ただ、考えてほしい。今回のいじめ事案への附属小の対応を見てみると、「それ以前にすでに支障をきたしている」と言えるだろう。以下のいじめ事案に関する調査書の概要版が公表されているので、是非読んでみてほしい。

いじめ重大事態に関する調査報告書(概要版)

 この概要版を読んでみると、如何に奈良教育大学附属小の組織がガタガタであるかがよくわかる。教育の先進的及び創造的開発をするという任を果たすような学校ではない。以下、組織的に機能していない部分をいくつか抜き書きする。

本件では,いじめの可能性がある事案が発生していることを認識し,担任教諭,学年団教諭,主幹教諭らが対応していたにも関わらず,校内いじめ防止等のための組織に報告されず,いじめとして認知されなかった。また,アンケートにいじめの可能性がある内容が書かれた場合も,いじめと認知されず組織的な対応がおこなわれなかった。いじめの早期発見のための組織的な取組がおこなわれていたとは認められなかった。(p3)

本件では,いじめの可能性がある事案が日常的に発生するようになってから,校内いじめ防止等のための組織でいじめと認知して組織的な対応を始めるまでに約 1 年間を要した。その間,担任教諭,学年団教諭,主幹教諭等が発生した事案への対処をおこなっていたものの,いじめ事案は児童同士のトラブルと捉えられて校内いじめ防止等のための組織への報告が遅れた。そのため,いじめをやめさせる有効な指導がおこなわれなかった。学校いじめ防止基本方針に示された対応手順に不備があったこと,いじめ防止対策推進法のいじめの定義についての理解不足などにより,学校いじめ防止等のための組織が有効に機能していなかった。(p3)

本件では,学級で起きている問題や課題を抱える児童の指導等について,クラス委員会において担任教諭へのサポートをおこなっていた。しかし,いじめをおこなった児童に対して十分な指導と支援がおこなわれず,結果としていじめをやめさせることができなかった。この背景には,校内いじめ防止等のための組織が機能しなかったことにより,学校の組織的対応として担任教諭,学年への有効なサポートがおこなわれなかったことがある。(p4)


 このように「対応すべきことをしていない」「組織的に対応していない」と指摘する箇所が、調査報告書の概要版の至る所にでてくる。学校として最低限確立しなければならない「安心・安全」ということが機能していないのだ。抜本的かつ解体的な出直しが求められる。

 以下は、私の予断と偏見に基づくものだが、なぜこのような事態に至ったのかを想像してみたい。元々、教育大学系の附属学校に赴任する教員の資質として、「教材研究」に力点を置く点が散見される。素晴らしい授業をしたいという思いから、熱心に夜遅くまで教材研究する先生が多い。これは素晴らしいことなのだが、教師としての仕事はそれだけではない。生徒指導も教育相談もクラス経営もある。そして、このようないじめ事案が発生すれば、真っ先に対応しなければならない。様々な能力と資質が求められるのだ。概要では、「なぜ組織的対応ができていないか」まで踏み込んでいない。おそらく、自分のやりたい仕事(教材研究など)ができなくなるからだ。だから、子ども同士のトラブルと考え(この捉えでも十分に対応しなければならないが)、いじめとして捉えなかったのだと想像する。だから、こんな教師集団は、一度「外」に出て、公立学校がどのような教育活動を行っているかを知るべきだろう。

大学の強制的な人事異動に反対の署名が行われているが、その署名活動に意味があるのかと思う。


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