6月11日、参議院で給特法の改正法案が可決した。50年ぶりの改正という事で、公立学校の現場には大きな問題を投げかけている。この事実をマスメディアはどのように伝えるのだろうかと思い、ニュース番組を見ていた。夜九時のNHKニュースでは、「その他のニュースをお伝えします」という項目で、成立した事実をさらっと報じていただけだった。そこで、新聞各社は、どのように伝えているのだろうかと思い、新聞をコンビニで購入してみた。
配達される読売新聞だが、法案成立の記事は、32行の内容で伝えていた。内容は、給特法の改正を伝えているのみであった。淡々としたものだ。
朝日新聞は、事実を伝えるとともに、関係者の声を伝えている。和歌山県の30代の女性教員(小学校)の声として、「管理が厳しくなれば『隠れ残業』がもっと増える。給料より教員増やして」を、神奈川県の30代男性教員(中学校)の声として、「部活、行事なども内容が薄く形式的になりそう。教員間のコミュニケーションも減るのでは」と教育の質の低下を懸念している内容を掲載している。一方、給料が上がることや35人学級に期待する声を掲載している。報道の公平性を確保するためだろう。
管理職の声として、東京都の校長(中学校)の意見として、「改革を本気で進めるなら、午後は授業をなくすなど大胆に変えないと」を紹介している。3人の欠員の授業を受け持った九州の教頭(小学校)は、「上乗せ額が少し上がっただけで教員不足が解消するとは思えない」とコメントしている。
さらに、教育委員会の声として、関西の市教委、関東の市教委の担当者の声として、自宅への持ち帰り仕事が増えるのではないかとコメントしている。
毎日新聞が、一番紙面を割いていた。給特法の改正の事実を伝えるとともに、「業務削減は現場に丸投げ」という見出しで、かなりの字数で掲載している。
教育委員会関係者の話として、東北地方のある市教委の担当者のコメントとして、「目標を決めるのは簡単かもしれないが、現場を無視した議論がなされたように感じる」と掲載し、「憤りをあらわにした」と表現している。また、時間外在校等時間を減らすために、「持ち帰り残業」が増えることを懸念している記事も掲載された。文科省が「30時間に持ち帰り残業は含まないこと」にしており、「持ち帰り業務は行わないことが原則」という立場をとっているからだ。この他にも「共育の森」が主催した管理職の記者会見を紹介している。この記者会見については、別の機会にコメントしたい。
朝日新聞も毎日新聞も現場の声を掲載していることは評価できる。これらの声をみれば、一目瞭然で今回の法改正が学校現場に即した内容になっていないことが読み取れる。なぜ、このような内容になったかは、二つの原因がある。政府‐文科省、そして与党議員が学校現場を知らないことは前提として、一つ目の原因は、野党議員でさえも学校現場を知らなさすぎるという事だろう。日教組の支持政党である立憲民主党でさえ、今回の給特法改正法案に賛成した。どういう了見かと思う。そして、二つ目の要因として考えられるのは、学校現場の声が強くないという事だ。昔は日教組の加入も支持も高かった。しかし、今では日教組の加入率も下がる一方で、政治的な力も落ちている。この法案改正に日教組の力はどこまで影響したのだろうと思うのだ。
今回の改正で、中学校の35人学級が実現する。しかし、現場の声にあるように、この法案の成立により教員の働き方改革がどれだけ進むのか、月30時間の時間外在校等時間は、達成できるのだろうか。教員の勤務実態調査は、絶対行わなければならない。そして、教員不足がどれほど解消したのかの検証が必要だ。
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